ネパールで大規模デモ、首相が辞任

(ネパール)

ニューデリー発

2025年09月11日

ネパールの首都カトマンズで9月8日、メジャーSNSへのアクセスを停止した政府の措置への抗議に端を発した、若者を中心とする大規模なデモが発生した。ネパール政府が同措置を撤回した後も政府の汚職などに対する抗議が続き、デモ参加者と治安部隊が衝突、19人が死亡し500人以上が負傷した(「ザ・ヒマラヤン」紙9月9日)。

ネパール政府は8月28日に、2023年に発表していたソーシャルメディアの利用に関する通達に基づき、偽情報対策を目的として、SNS運営企業に対して7日間の猶予期間内に政府へ登録するよう要求していた。猶予期間が失効した9月4日には、政府はネパール電気通信局に対して、未登録のSNSについてネパール国内からの接続遮断を命じた(「ザ・ヒマラヤン」紙9月4日)。これによって、4日時点で登録が完了していたティックトック(TikTok)やバイバー(Viber)などを除く、インスタグラム(Instagram)やワッツアップ(WhatsApp)などを含む26のメジャーSNSが利用できなくなった。

これをきっかけとして、特に若者の間で、SNSの利用制限に対してだけでなく、長年の政府の汚職問題に対する批判や抗議活動が急速に広がった。デモを受けてネパール政府は8日に、SNSに対する措置を撤回したが、事態は収束せずエスカレートしている。9日には暴徒化したデモ参加者により、ネパールの連邦議会議事堂や多くの有力政治家の自宅が放火されたほか、治安悪化によりカトマンズのトリブバン国際空港が閉鎖された。

この混乱を受けて、ネパールのカドガ・プラサード・シャルマ・オリ首相は9日午後に辞任した。現地報道によると、オリ首相は大統領に宛てた書簡で「国内の状況悪化を考慮し、憲法に基づく政治的解決を図るため、直ちに首相職を辞任する」と表明した(「ザ・ヒマラヤン」紙9月9日)。

近年、南西アジア地域では、市民による反政府デモを発端とした政変が相次いでいる。2022年3月にはスリランカで、食料・燃料価格の高騰などに対する抗議活動により当時の内閣が総辞職に追い込まれた(2022年4月12日記事参照)。また、2024年8月にはバングラデシュで、公務員採用の特別枠に反発した学生らによる大規模なデモをきっかけとして、約15年続いたハシナ前政権が崩壊している(2024年8月6日記事参照)。

(丸山春花)

(ネパール)

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