行政長官の施政報告、AI応用を主導する専門チーム発足、北部都会区は開発加速へ
(香港)
香港発
2025年09月29日
香港特別行政区政府の李家超(ジョン・リー)行政長官は9月17日、就任後4回目となる施政報告(施政方針演説)を行った。
報告は「明るい未来へ、強みを生かした人民のための改革深化」と題し、主に「ガバナンスシステムの強化」「北部都会区開発の加速」「産業発展と改革」「強みの結集による国家全体の発展への統合」「教育、技術、人材能力の統合的発展の促進」などについて行われた。
「ガバナンスシステムの強化」では、「部門首長責任制」を導入し、政策の立案と実施で責任の明確化を図るとした。また、行政副長官が主導する「人工知能(AI)効果向上チーム」を設置し、政府部門のAI技術応用を統括し、優先順位を付けて応用を進めていくなどとした。
「北部都会区開発の加速」では、行政長官が主宰する「北部都会区発展委員会」を設置して、意思決定レベルを引き上げるとしたほか、政府が簡略化された法律上の手続きを策定できる権限を付与するための特別法導入などを盛り込んだ。
「産業発展と改革」では、航空機リサイクルや新エネルギー産業など新型工業化産業の発展推進、製薬企業の革新的医薬品の市場投入の支援、AIやデータサイエンス産業の発展促進と応用拡大などを盛り込んだ。
「強みの結集による国家全体の発展への統合」では、香港の強みである「国際金融センター」「国際貿易センター」「国際航空ハブ」などについてそれぞれ方針を打ち出した。「国際金融センター」については、香港で金の決済システムを導入し、より多くの機関が香港で金の保管施設を拡大していくことを奨励するとしたほか、デジタル資産取引や有価証券管理サービスの免許制度に関する立法案の策定、広東・香港・マカオグレーターベイエリア(粤港澳大湾区)でのカーボンマーケットの連携深化、クロスボーダー取引決済の試験運用の実施などを盛り込んだ。「国際貿易センター」については、サウジアラビア、バングラデシュ、エジプト、ペルーとの新たな投資協定の締結検討や、クアラルンプールに経済貿易事務所の設置と同事務所の管轄拡大(ラテンアメリカ、中央アジア)などを挙げた。「国際航空ハブ」については、空港周辺で進む開発工事として、「亜洲国際博覧館(AsiaWorld-Expo)」の第2期工事やヨットハーバーと同関連施設の開発を推進するほか、東莞-香港国際空港センター(東莞空港センター、2023年4月28日記事参照)の段階的な施設完成と第2期工事の前期調査開始を行い、「空港都市」開発を拡大するとした。
このほか、中国本土企業のグローバル展開支援専門チームを立ち上げ、中国本土企業が香港を活用して海外事業拡大を図るよう積極的に誘致するとともに、そのための多様なソリューションを策定するとした。
「教育、技術、人材の統合的発展の促進」では、低空経済エコシステムの構築を推進するとしたほか、第3期InnoHK研究開発プラットフォームの建設を加速し、持続可能な開発、エネルギー、先進製造・材料分野に重点を置くことなどを盛り込んだ。
施政報告の詳細は香港政府のウェブサイトで確認できる。
(越川剛)
(香港)
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