次世代原子力発電開発のオクロ、米テネシー州で核燃料リサイクル施設建設など約17億ドル投資を発表

(米国)

アトランタ発

2025年09月09日

米国テネシー州のビル・リー知事(共和党)は9月4日、先進炉と燃料リサイクルの開発を進めているオクロ(本社:カリフォルニア州サンタクララ)が先進的な核燃料リサイクル施設の開発を含む約17億ドルの拡張計画先として、テネシー州オークリッジを選定したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

オープンAIの創業者で最高経営責任者(CEO)のサム・アルトマン氏が共同で設立したオクロ(注1)は次世代核分裂発電所を開発しており、アイダホ国立研究所と連携して、最大75メガワット(MW)の電力を生産する同社初の商業用原子炉を備えた「オーロラ」発電所を建設中で、2027年の稼働開始を目指している。

今回発表されたのは、テネシー州に燃料リサイクル施設を設計・建設・運営する計画で、総額最大16億8,000万ドルを投じる先進燃料センターの第1段階として位置付けられ、800人を超える新たな雇用を創出する見込みだ。新施設では同社の「オーロラ」発電所などで高速炉用燃料として利用できるよう、使用済み核燃料をリサイクルする予定で、米国初のクリーンで信頼性の高いエネルギー供給基盤の確立を目指している。また、同社はテネシー川流域開発公社(TVA)との協業機会も模索しており、新施設でのTVAの使用済み核燃料の再処理や、同地域にオクロが建設予定の発電所で発電した電力をTVA向けに販売する可能性も評価しているという。

オクロは米国原子力規制委員会(NRC)に対し、燃料再処理施設の認可プロジェクト計画を提出済みで、9月8日時点で事前申請について規制当局と協議している段階だ。7月には「オーロラ」発電所向けの統合ライセンス申請の第1段階の事前申請準備評価を完了しており、テネシー州の新施設は審査と承認を経て、2030年代初頭までに「オーロラ」発電所向け金属燃料の生産を開始する見込みだ。

テネシー州は、原子力基金(注2)を活用した原子力関連企業の誘致や教育・訓練プログラムの提供などにより、州の原子力開発・製造エコシステムの拡大を目指しており、同基金を活用して同州に進出した企業はオクロで5社目(注3)となる(2024年9月10日記事2024年11月27日記事2025年8月22日記事参照)。今回選定されたオークリッジには、原子力関連産業が集積しているほか、米国エネルギー省管轄のオークリッジ国立研究所があり、原子力関連の研究も盛んだ(2024年11月26日記事参照、注4)。

(注1)アルトマン氏は2025年4月、オクロの会長職を辞任した。

(注2)5,000万ドルが2023~2024会計年度で州議会で承認され、2024~2025会計年度では2,000万ドルが追加配分されている。

(注3)これまで同基金を活用した同州への投資を発表したのは、ステラレータ型核融合技術を開発するタイプ・ワン・エナジー、フランスの原子力燃料大手オラノ、遠心分離機などを製造するBWXテクノロジーズ、原子力産業向け高精度加工やエンジニアリングサービスなどを提供するマスター・マシーンの4社。

(注4)オークリッジには、1942年に開始された国家軍事プロジェクト「マンハッタン計画」で3つのオリジナルサイトの1つとして、ウラン濃縮施設が立地していた。

(檀野浩規)

(米国)

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