インドネシア・EUのCEPA交渉妥結、99%が関税撤廃

(インドネシア、EU、ASEAN)

ジャカルタ発

2025年09月30日

インドネシア経済担当調整府は9月23日、EUとの包括的経済連携協定(IEU-CEPA)交渉の実質合意を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。インドネシア政府は2025年7月、プラボウォ・スビアント大統領の外遊先であるベルギーで、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長との首脳会談を実施し、同協定が政治合意に達したと発表していた(2025年7月22日記事参照)。同CEPA交渉は2016年7月に開始され、約9年間に及ぶ交渉を経て今回の合意に至った。

経済担当調整府はプレスリリースで、EUとのCEPA署名はASEANではシンガポール、ベトナムに次ぐ3カ国目(注1)とし、「インドネシアの製品と投資に対して、より公平な競争条件が確保される」と説明した。アイルランガ・ハルタルト経済担当調整相は9月23日、インドネシア・バリで欧州委のマロシュ・シェフチェビッチ貿易・経済安全保障担当委員と行った署名式後の記者会見で、「(今回の実質合意は)両国・地域間における開かれた、公正で、持続可能な経済協力関係に対する、共通かつ継続的なコミットメントを反映した歴史的な節目」とした。

同協定により、両国・地域は関税品目ライン数ベースで双方98%、輸入額ベースでは双方99%の品目について関税を撤廃する。また、協定発効時において、EU側の関税品目の90.4%が即時に撤廃される。発効後も段階的削減を実施し、自由化率は5年以内に96%に達するとした(9月23日、欧州委員会発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。経済担当調整府の発表では、インドネシアからパーム油、コーヒー豆、繊維製品および衣料品、履物、家具などの製品の輸出が増加するとしたほか、スマートフォンや通信機器を含むハイテク製品の輸出機会の拡大にもつながると強調した。

「デジタル貿易章」では、自由な越境データフローの確保(不当なデータローカライゼーション要求の禁止)、個人データ保護とプライバシーの基本的人権としての認識、WTOルールと整合的な電子的な送信に対する関税不賦課、ソースコードの強制的な移転または開示の禁止(例外規定あり)など先進的な規定が盛り込まれる。同章について、経済担当調整府は「2023年のASEAN議長国としてのインドネシアが主導した地域的なデジタル経済枠組み協定(DEFA)のイニシアチブに合致する先駆的な特徴だ」と強調した。「国有企業(SOE)章」では、SOEが通常の商業的考慮に基づいて商業活動を行うことを保証し、公共政策上の目的がある場合でも、相手側の企業に対して差別的な扱いをしないことを確保する規定などが盛り込まれる。

インドネシアのシンクタンク、経済・金融開発研究所(INDEF)のエコノミストのズールフィアン・シャフリアン氏は、今回の実質妥結について「インドネシアの失業者を減らすための解決策の1つになり得る」としたうえで、「インドネシア政府はIEU-CEPAにより得られる利益のうち、関税削減や撤廃などの物品貿易の側面だけではなく、移住労働者の側面からも推進すべきだ」(注2)と強調した(9月25日「アンタラ」)。

(注1)EUはマレーシア、フィリピン、タイともCEPA交渉を継続中。

(注2)本協定の「サービス貿易・投資章」において、金融サービス、郵便サービス、電気通信、海上輸送、製造業、鉱業、再生可能エネルギーなどの分野において、ビジネス目的による双方の国・地域への一時的な入国を許可し、専門家の移動を円滑化することが規定される。

(大滝泰史)

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