米主要港、7月の小売業者向け輸入コンテナ量は前月比20.1%増で過去2番目の高水準も、年末は大幅減の見通し

(米国)

ニューヨーク発

2025年09月11日

全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社のハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(9月9日)によると、7月の米国小売業者向けの主要輸入港(注1)の輸入コンテナ量は、前月比20.1%増、前年同月比1.8%増の236 万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算、添付資料図参照)となった(注2)。

8月の相互関税発動(2025年8月4日記事参照)の影響を回避するため、小売業者が輸入の前倒しを進めたことから、7月の輸入量は2022年5月の240万TEUに次ぐ、過去2番目の高水準を記録した。ただし、2025年末にかけて貨物量は着実に減少すると見込まれている。今後の見通しでは、8月は前年同月比1.7%減の228万TEUと高めの水準となるものの、9月は同6.8%減の212万TEU、10月は同13.2%減の195万TEU、11月は19.7%減の174万TEUと、急速な減少が見込まれている。さらに12月は20.1%減の170万TEUと大幅に減少し、2023年3月以来の低水準になる見通しが示された。ただし、同報告では、月間総量の減少は関税の影響によるものの、前年比での減少率は、2025年のピークシーズンが早期に訪れたことや、2024年後半に発生した米東海岸とメキシコ湾岸の港湾での大規模ストライキへの懸念により(2024年10月7日記事参照)、2024年の輸入量が増加したことも背景にあると分析されている。2025年通年での輸入量は前年比で3.4%減少すると予想されている。

NRFのサプライチェーン・税関担当副会長のジョナサン・ゴールド氏は「世界中で相互関税が発動され、多くの主要貿易相手国が(ベースライン関税である)10%の関税を上回る税率の対象となった」とした上で、「より広範な製品に影響を及ぼすセクター別関税も増加している。小売業者は関税引き上げに備え、可能な限りの在庫を確保してきたが、米国の貿易政策の不透明感により、将来の事業成功に不可欠な長期計画の策定が不可能となっている」との懸念を示した。

また、サプライチェーン技術会社のデカルトが発表した「グローバル・シッピング・レポート」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(9月9日)によると、8月の米国の対中国輸入量は前年同月比10.8%減だった。アルミニウム製品、衣類、履物の減少が特に減少に寄与したほか、家具や玩具、電気機械の輸入も減少した。同社産業戦略ディレクターのジャクソン・ウッド氏は、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく追加関税措置の適法性が今後、最高裁判所で審議されることを引き合いに、米国輸入業者は「継続的な不確実性に対処せざるを得ない状況にある」と警告した。

業界専門家は今回の発表を受け、貿易摩擦の継続や国内製造業の縮小、雇用市場の弱体化、そしてインフレに疲れた消費者が重要な年末商戦期に支出を大幅に削減する懸念が重なり、2025年後半の見通しは暗くなった、と指摘した(ロイター9月12日)。

(注1)主要輸入港は、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトルおよびタコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミおよびジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港を指す。

(注2)発表されている貨物量のTEUと前年同月比の数値は端数処理の関係で一致しない場合がある。

(樫葉さくら)

(米国)

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