イスラエル、ガザ市掌握へ軍事作戦拡大を決定

(イスラエル、パレスチナ、アルジェリア、英国、ロシア、米国、オーストラリア、カナダ)

テルアビブ発

2025年08月12日

イスラエルの安全保障閣議は8月8日、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の提案を承認し、パレスチナ自治区ガザ地区のガザ市掌握に向けた軍事作戦の準備を進める方針を決定した。イスラエル首相府外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、イスラエル国防軍(IDF)は戦闘地域外の民間人に対する人道支援を継続しつつ、ガザ市制圧に向けた体制を整えるとしている。

安全保障閣議では、ガザ地区での戦闘終結後の秩序構築に向けた次の「5つの原則」を採択した。

  1. ハマスの武装解除
  2. 全ての人質(生存者、死亡者を含む)の解放
  3. ガザ地区の非軍事化
  4. ガザ地区でのイスラエルによる治安管理
  5. ハマスでもパレスチナ自治政府でもない代替的民政機構の設立

ネタニヤフ首相は8月10日、外国メディア向けの記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行い、ガザ地区での軍事作戦の目的と戦闘終結後の構想について説明した。同首相は「われわれの目標はガザを占領することではない。ハマスのテロリストからガザを解放することだ」とし、「ハマスが武器を放棄することを拒否している以上、イスラエルにはハマスを完全に打倒する以外に選択肢はない」と主張した。同首相によると、安全保障閣議は8月7日にIDFに対し、ガザ市とガザ地区中部の難民キャンプのハマス拠点を解体するよう指示を出したとしており、「これこそが戦闘を終結させる最善かつ最速の方法だ」と強調した。

イスラエルの軍事作戦承認を受けて、国連安全保障理事会は8月10日に緊急会合を開催した。国連外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、アルジェリア代表は「ガザは地獄に直面している」と述べ、英国代表は、イスラエルの軍事作戦拡大は「解決への道ではなく、さらなる流血への道だ」と警告した。ロシア代表はイスラエルのガザ占領の意図について「中東紛争の平和的解決に向け、既に脆弱(ぜいじゃく)な見通しを損なう危険な措置だ」と非難した。一方、米国代表は停戦提案を一貫して拒否してきたハマスに責任を負わせるよう求めた。

国際社会ではパレスチナの国家承認の動きが進展しており、オーストラリア政府は8月11日、パレスチナ国家を正式に承認する方針を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。アンソニー・アルバニージー首相は声明で「『二国家解決』こそが中東での暴力の連鎖を断ち切り、ガザにおける紛争、苦しみ、飢餓を終わらせるための、人類にとって最善の希望だ」と述べた。フランスと英国、カナダは既に国家承認の意向を示している(2025年8月5日記事参照)。

イスラエルとハマスの衝突の詳細についてはジェトロの特集を参照。

(中溝丘、イバン・ステシェンコ)

(イスラエル、パレスチナ、アルジェリア、英国、ロシア、米国、オーストラリア、カナダ)

ビジネス短信 ff9456c0f2b0b777