欧州委、鉄鋼・金属行動計画の実施に着手、加盟国や産業界も積極的な提言

(EU、米国)

ブリュッセル発

2025年08月13日

欧州委員会は7月18日、現行の鉄鋼セーフガード措置終了(2026年6月末)後に導入する予定の貿易措置に関し、パブリックコンサルテーション(公開諮問)を開始した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。8月18日まで関係者の意見を受け付け、鉄鋼・金属行動計画(2025年3月27日記事参照)で表明したとおり、9月末までに新措置に係る法案を発表する。

新措置について、フランスなどEU加盟11カ国(注)は7月28日、非公式の文書を発表し、(1)現行措置(2025年3月28日記事参照)同様、無関税輸入枠〔関税割当枠(クオータ)〕を設定するが、割当量は2024年の鉄鋼需要に基づき、現行から40~50%減らす、(2)無関税輸入枠は全ての第三国に公平に配分するが、段階的な自由化や未使用分の翌年への繰越しは行わない、(3)新たに方向性電磁鋼板(GOES)など、現行措置では対象外となっている特定の鉄鋼製品も対象に含める、(4)現行措置撤廃を待たず、2026年1月1日から実施することなどを提案した。

欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は7月29日、「行動計画の目標に沿ったもの」として、11カ国の提案を歓迎し、欧州委に対し、提案の検討と早期の法案発表、施行を要請した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。さらに、米国による鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税措置に伴う不確実性が増す中、米国と共同で世界的な過剰生産への対処策を速やかに進めるよう訴えた(2025年7月29日記事参照)。

鉄スクラップ輸出監視強化へ、リサイクル部門から懸念も

欧州委はまた7月23日に、金属廃棄物・スクラップの輸出入の監視システムを導入した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。米国の追加関税措置の影響を受け、本来は米国向けだった金属スクラップの第三国への輸出がさらに増加傾向にあることから(2025年6月9日記事参照)、輸出入の監視を強化することで、EU域内のリサイクル用スクラップの確保、金属産業のレジリエンスと持続可能性の強化を目指す。また、収集したデータを基に9月末までに追加措置の必要性も評価する。

欧州リサイクル産業連盟(EuRIC)は25日、輸出入の監視強化を支持するものの、追加措置の導入には慎重な考えを示した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。鉄鋼リサイクル部門は1975年以降、欧州全域で約93億ユーロ以上を投じ、EU域内の鉄鋼需要が減少する中、リサイクルした金属の輸出で競争力を維持してきたと述べた。追加措置の検討に当たり、欧州委は輸出入する製品の質や1月以降に急増している鉄鋼の一次原材料の輸入量なども監視し、域内の鉄鋼生産者が域内産リサイクル金属の調達を進める必要性を指摘した。

(注)オーストリア、ベルギー、ブルガリア、フランス、ギリシャ、イタリア、ルクセンブルク、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スペイン。

(滝澤祥子)

(EU、米国)

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