TICAD9閉幕、33人の首脳級含むアフリカ49カ国の代表が参加、横浜宣言採択
(アフリカ、日本)
調査部中東アフリカ課
2025年08月25日
日本政府と国連などが共催する第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が8月20~22日に横浜市で開催され、アフリカから33人の首脳級を含む49カ国の代表、国際機関の代表などが参加した。TICAD9の本会合では、アフリカ連合(AU)議長国アンゴラのジョアン・ロウレンソ大統領と石破茂首相が共同議長を務めた。テーマ「革新的な課題解決の共創、アフリカと共に」の下で、官民連携や若者・女性のエンパワーメント、地域統合・連結性などについて議論した。
石破首相は22日の閉会式で、日本はTICAD創設の1993年以来、一貫してアフリカの未来を信じ、アフリカの信頼できるパートナーであり続けていると述べ、アフリカの発展のためには現地に根ざした解決策が重要だとした。
日本の外務省は今回の成果として、閉会式で「TICAD9横浜宣言」を採択したと発表した。宣言で今後の取り組みや重要性の認識に関する概要は次のとおり。
(1)経済
- 自由で開かれた「インド太平洋イニシアティブ(FOIP)」に好意的に留意
- アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)を通じた地域統合と連結性の強化
- デジタルトランスフォーメーション(DX)、人工知能(AI)、衛星データ利用の促進、AIガバナンス構築
- アフリカビジネス協議会(JBCA)やアフリカ・インフラ協議会(J AIDA)を含む官民連携の強化
- 航空・鉄道、港湾などの輸送インフラの改善
- 貧困・食料不安解消に向けた農業システムの強化、水資源の経済的潜在力を活用
- 重要鉱物資源の安定供給・責任ある開発、現地における付加価値の付与の重要性
- 経済成長、エネルギー安全保障、脱炭素化に同時に取り組むことの重要性
- 国内資金動員の強化、適切な債務管理
- 電力アクセスの改善
- アフリカの民間セクター開発のための共同イニシアティブ(EPSA)の拡充を歓迎
- 多角的貿易体制(WTO)の重要性
(2)社会
- ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)達成に向けた保健システム強化
- 人材育成(初中等教育、高等教育、産業人材育成)
- 日アフリカの若者の相互交流の重要性
- 廃棄物処理の重要性
- 干ばつ、洪水、熱帯サイクロン、地震などへの防災分野の日本の貢献を歓迎
(3)平和と安定
- 人間の安全保障促進の重要性
- サイバーセキュリティー、海賊対策、国際組織犯罪、不正な資金などへの対策強化
- 人道、開発、平和の連携
- グッドガバナンス、民主主義、法の支配の重要性
- 女性、平和、安全保障の促進
- 国連安全保障理事会の改革に向けた協力
- 核兵器のない世界の実現
次回の第10回アフリカ開発会議(TICAD10)は、2028年ごろにアフリカで開催される予定だ。
また、外務省は、TICAD9に合わせて行われた石破首相の30件以上の首脳会談や各国・国際機関代表との会談、岩屋毅外相の約30件の会談などの概要を公表した(外務省「第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)」参照)。
経済産業省は別途、TICAD9における同省の成果と取り組みを発表している(2025年8月25日記事参照)。
(井澤壌士)
(アフリカ、日本)
ビジネス短信 d5aea3529df13834