UNDP、TICAD9に合わせて人間の安全保障や信用格付け報告書を発表
(アフリカ、日本)
調査部中東アフリカ課
2025年08月26日
日本政府と国連開発計画(UNDP)などの共催で、8月20~22日に第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が横浜市で開催され、アフリカから33人の首脳級を含む49カ国の代表、国際機関の代表などが参加した(2025年8月25日記事参照)。
UNDPはTICAD9会期前の8月18日、アフリカや日本の関係機関と協力して実施したUNDPの成果報告「TICAD9インパクト報告書」を発表した。同報告書によると、2022年のTICAD8以降、日本政府はアフリカ39カ国で73プロジェクトを支援し、1億1,440万ドル以上の資金を提供した。気候変動対策やスマート農業推進、地方自治体の能力強化、紛争後の生計回復、平和構築など多岐にわたる支援をした。
例えば、トーゴでは緊急医療対応や地雷対策の人材育成、マリでは安全な労働環境を重視した繊維産業の支援が実施された。ナイジェリア、エチオピア、ルワンダ、ケニア、ザンビアでは、日本も協力するUNDPのイニシアチブ「timbuktoo」により、300以上のスタートアップが支援を受けた。
また、UNDPは同じ18日、「レジリエントで豊かなアフリカに向けた『人間の安全保障』の推進」を発表した。報告書では、気候変動、医療・健康危機、デジタル変革、強制移住など複雑なリスクに対処するために、分野や機関、国境を越えた連携強化が必要だとした。
アフリカでの開発に信用格付けも影響
また、UNDPは8月18日、信用格付けに関する報告書「主権信用格付け:アフリカの開発展望」も発表した。信用格付けは借り入れコストや投資家の信頼、開発パートナーの関与など、アフリカの開発に影響与えるため、重要視される。
報告書によると、主要な信用格付け機関(ムーディーズ、S&Pグローバル・レーティング、フィッチ・レーティングス)がアフリカで信用格付けを行う32カ国中、「投資適格級」はボツワナとモーリシャスのみだ(2025年6月時点)。30カ国は「投機的」との格付けで、借り入れコストの上昇と資金調達額の減少につながっている。
投資格付けが低い国では、政治面で過去10年で10カ国が政変を経験し、腐敗や透明性の欠如などもあり、経済面では高い債務水準、特定の産業依存、外貨不足などがある。信用格付けを有しない国については、経済データの不足などもあるという。他方、信用格付けは多くの場合、全体像を正確に反映していないという課題もあり、報告書では各種改善策を提言している。
なお、モーリシャスは砂糖産業依存型の経済から、観光や金融サービス、情報技術など経済多角化に成功したほか、金融規制や司法制度などを整備し、投資家の信頼を得ているという。ボツワナはガバナンス指標で上位に位置し、ダイヤモンド資源を生かした財政黒字をインフラや教育、医療に再投資し、持続的な開発を支えているという。
(井澤壌士)
(アフリカ、日本)
ビジネス短信 cedce4ce570a60a0