世界最大の海洋CO2除去・水素生産施設が2026年に稼働へ
(シンガポール)
シンガポール発
2025年08月27日
シンガポール西部トゥアスに、海水から二酸化炭素(CO2)を除去する世界最大の実証施設「イクアティック-1」が2026年、稼働する予定だ。8月24日付の英字紙「ストレーツ・タイムズ」が伝えた。同施設は、シンガポール公益事業庁(PUB)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)と同大学発のスタートアップであるイクアティック(Equatic)が共同で建設する。フル稼働時には1日当たり10トンのCO2を除去すると同時に、同300キロのグリーン水素を生産する見通しだ。
イクアティックが独自に開発した技術は、海水を電気分解して水素と酸素を生成する過程で海水のCO2を回収し、カルシウムとマグネシウム由来の個体材料として1万年以上にわたり安全に貯蔵ができるというもの。UCLAとイクアティックは2023年、PUBと共同で米国とシンガポールの双方で実証実験を行っていた。同実験の成功を受け、本格的な実証施設の建設に至った。シンガポールの新施設は、PUBの海水淡水化施設に隣接して設置される。
PUBによると、海水からCO2を除去することで、海水の温室効果ガスの吸収能力が高まるという。シンガポール政府は2050年までにCO2排出量を実質ゼロ(ネットゼロ)とする目標を設定している。PUBは政府全体の目標より5年早く、2045年のネットゼロ達成を目指している。
イクアティック、シンガポール投資会社などから1,160万米ドルの資金調達
イクアティックは8月11日に、シンガポール政府系非営利団体のテマセク基金の投資部門「カタリティック・キャピタル・フォー・クライメート・アンド・ヘルス(C3H)」と、投資会社のキボ・インベスト(本社:シンガポール)などから、総額1,160万米ドルに上るシリーズAの資金を調達したと発表した。同社は2021年、テマセク基金が環境分野の先端技術を公募する「ザ・リバビリティ・チャレンジ」で優勝し、100万シンガポール・ドル(約1億1,500万円、Sドル、1Sドル=約115円)の資金を獲得していた(2021年1月20日記事参照)。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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