16加盟国が防衛費拡大に向けた財政規律の一時停止措置を申請
(EU)
ブリュッセル発
2025年05月07日
EU理事会(閣僚理事会)は4月30日、16の加盟国がEU財政規律枠組み(2024年2月21日記事参照)における過剰財政赤字手続きの一時的な適用停止措置を申請したと発表した(プレスリリース)。同措置は、ロシアによるウクライナ侵攻や欧州の安全保障体制の変化など新たな地政学的な環境に対応すべく、欧州委が発表した新たな防衛白書「準備2030」(2025年3月21日記事参照)が提唱する欧州防衛力の再構築の実現に向けた財源捻出策(2025年3月21日記事参照)の1つだ。防衛費の拡大に向け、2025年からの4年間の軍事関連歳出に限定した上で、EU財政規律枠組みにおいて加盟国ごとに設定される、基礎的歳出の道筋(net expenditure path)から最大GDP比1.5%の乖離を認めるものだ。
今回、同措置の適用を欧州委員会に申請したのは、ベルギー、ブルガリア、チェコ、デンマーク、ドイツ、エストニア、ギリシャ、クロアチア、ラトビア、リトアニア、ハンガリー、ポーランド、ポルトガル、スロベニア、スロバキア、フィンランド。EU理事会は今後、欧州委による申請の審査を経て、同措置の発動の可否を決定する。
欧州委は、同措置により最大で6,500億ユーロ規模の財政余力が確保できるとしているとしているが、これはあくまで全加盟国が防衛費を段階的にGDP比で1.5%拡大すると仮定した場合の試算だ。最大の経済大国で防衛費の急拡大を進めるドイツ(2025年3月24日記事参照)は申請済みであるものの、スペインやオランダといった主要国のほか、既に過剰財政赤字手続きの対象となっているフランス、イタリアはいまだに申請をしていない。欧州委は今後も加盟国からの申請を受け付けるとしており、こうした主要国の動向が注目される。
(吉沼啓介)
(EU)
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