7月のカナダ消費者物価指数、前年同月比1.7%上昇

(カナダ)

トロント発

2025年08月22日

カナダ統計局が8月19日に発表した2025年7月の消費者物価指数(CPI)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、前年同月比1.7%上昇で6月の上昇率(1.9%、2025年7月18日記事参照)を0.2ポイント下回った(添付資料表参照)。

統計局は、伸び率が鈍化した主な要因として、ガソリン価格の下落(前年同月比16.1%減、6月13.4%減)を挙げた。4月に廃止された消費者向け消費者炭素税(注)や、中東地域の停戦、OPECによる供給増加などがあり、これらがガソリン価格の下落につながったと分析している。なお、ガソリンを除いたCPIは前年同月比で2.5%上昇となり、5月および6月と同水準を維持した。また、天然ガス価格も7.3%減となったが、6月(14.1%減)と比べて下落幅は縮小した。これは主にオンタリオ州での価格上昇(1.8%増)の影響だとしている。

一方で、鈍化の緩和要因として、家庭用食料品(前年同月比3.4%、6月2.8%増)の価格上昇が挙げられた。中でも、菓子類(11.8%増)、コーヒー(28.6%増)、果物(3.9%増)などの上昇が寄与した。特にブドウは29.7%増と大幅な上昇が見られた。2025年7月時点で、カナダの消費者による店舗での食料品購入額は、2020年7月比27.1%増となっている。さらに、住宅関連費用も上昇傾向にあり、住宅ローン金利の伸びが鈍化する中、住宅は前年同月比で3.0%増(6月2.9%増)、家賃は5.1%増(6月4.7%増)と、いずれも上昇ペースが加速した。

発表を受けて、CIBCキャピタルマーケッツのエグゼクティブ・ディレクター兼シニアエコノミストのアンドリュー・グランサム氏は、2025年初に見られたインフレ率の加速が、一時的な要因(関税の早期転嫁など)によるものだったことを裏付けていると分析。同氏は「もし8月のCPIでも同様の傾向が確認されれば、(中央銀行の)9月の会合で0.25ポイントの利下げに踏み切る可能性が高い」と述べた(CIBCエコノミックフラッシュ8月19日)。一方で、ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)傘下のRBCエコノミクスのエコノミスト、クレア・ファン氏は、カナダの労働市場は軟化しているが、現状が底に近いと見ており、これ以上の利下げは行われないと予想した(RBCカナディアンインフレーションウオッチ8月19日)。

中銀の次回の政策金利発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは9月17日に予定されている。

(注)連邦温暖化ガス汚染価格制度(GGPPA、Greenhouse Gas Pollution Pricing Act)は、連邦OBPS制度(Output-Based Pricing System)と連邦炭素税制度(Fuel Charge)で構成される。連邦炭素税制度(Fuel Charge)は、最終消費者を対象に温室効果ガス(GHG)排出に直接かかわる化石燃料(ガソリンや軽油)に対する課税で、全ての条件を満たした納税者に対し、個人向けカナダ炭素税還付(CCR)が適用される(2023年9月27日付地域・分析レポート参照)。

(井口まゆ子)

(カナダ)

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