アルゼンチン政府、銅輸出の任意登録制度を廃止し、鉱物の輸出税を無税に
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2025年08月08日
アルゼンチン政府は8月7日、政令563/2025号を公布し、銅輸出の任意登録制度を廃止するとともに、銅鉱を含む複数の鉱物の輸出税を無税とした。
銅輸出の任意登録制度は、アルベルト・フェルナンデス政権下の2022年6月に導入されたもので、メルコスール共通関税分類番号(NCMコード)2603.00.10、2603.00.90、2603.30.00に該当する銅鉱について、制度に登録しない場合は4.5%の輸出税を、登録する場合は基準価格、参考価格、国際価格の3つの値により0~8%の輸出税が課税される仕組みだった(2022年6月15日記事参照)。政令によると、この制度に運用実績はなく、登録事業者も存在しないことから廃止を決定した。
また、チリやペルー、ボリビアなど近隣の鉱業国の中には、鉱業がGDPに占める割合が10%を超える国がある中、アルゼンチンが銅、リチウムを中心とした重要鉱物の豊富な埋蔵量を有するにもかかわらず、鉱業はGDPの1.2%を占めるに過ぎないとして、同分野の開発促進に向けた環境整備が必要との認識が示された。そのため政府は、NCM8桁ベースで231品目の鉱物資源について輸出税率を無税とした(政令付属書参照)。政府は、拡大信用供与措置(EFF)でアルゼンチンを支援するIMFに対して、輸出税を段階的に廃止することを約束しており、今回の措置はその一環でもある。
アルゼンチン鉱業庁によると、2024年の鉱物の輸出額は46億4,700万ドルで輸出額全体の5.9%を占めた。内訳は、金属(リチウムを除く)が38億5,400万ドル、リチウムが6億3,100万ドル、残りが1億6,200万ドルとなっており、金属の68%を金、14%を銀が占めた。今回、輸出税が無税になったのは、金の場合は輸出実績のない金粉(NCM 7108.11.00)のみであり、鉱物向け輸出税の撤廃による税収への影響は限られるようだ。リチウムの輸出税は以前から無税となっている。銅鉱(NCM 2603.00.10、2603.00.90)については、これまでの4.5%から無税となった。
2023年12月のミレイ政権発足後は、アルゼンチンの銅への投資に注目が集まっている。同政権が2024年7月に導入した、所得税と輸出入税の減免や資本取引規制の例外措置を適用する大型投資奨励制度(RIGI)には、2025年8月現在、サン・フアン州で開発が進められている銅鉱山「ロス・アスレス」(カナダのマッキュアン)の案件が唯一の銅鉱山開発案件として登録されている。資源メジャーが開発を進める案件も国内には複数あるが、現地の複数報道は、オーストラリアのBHPとカナダのルンディンがサン・フアン州で開発を進める案件「ビクーニャ」へのRIGIの適用を2025年下半期に申請する計画が明らかになった、と報じている。投資額は150億ドルと、過去最大級の直接投資案件になる見込みだ。
(西澤裕介)
(アルゼンチン)
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