追加関税、当初発表より引き上げ25%へ、産業界は政府の対応強化を要請
(マレーシア、米国)
クアラルンプール発
2025年07月09日
マレーシア投資貿易産業省(MITI)は7月8日、「米国との建設的な関与と対話を継続し、バランスのとれた相互に利益ある貿易協定の実現を目指す」とする声明を発表した。米国のドナルド・トランプ大統領が7日にマレーシア含む14カ国の元首に対し、8月1日から追加関税を課す内容の書簡を送付したこと(2025年7月8日記事参照)を受けての反応だ。
米国は今回、マレーシアのイブラヒム第17代国王に宛てた書簡で、25%の追加関税を8月1日から課すことを明記した。4月に発表した税率は24%だったが、1ポイント上乗せしたかたちだ(2025年4月4日記事参照)。書簡を送付された14カ国のうち、当初の税率から引き上げられたのは、日本とマレーシアのみだった。マレーシア政府は4月以降、米国での2国間協議などを通じ、迂回輸出防止策の導入にも取り組んでいたが(2025年5月7日記事参照)、結果的に譲歩は不十分と捉えられ、書簡では「(25%という税率は)マレーシアとの貿易赤字を解消するために必要な税率よりはるかに低い」と記載されている。
MITIは声明で、米国の決定に「留意する(take note)」と表現するにとどめ、対話路線を継続しながら、互恵的で包括的な貿易協定の締結に取り組む決意をあらためて強調した。米国との長年の経済・貿易関係を重視し、両国の雇用と成長を支える上で、自由で公正な貿易が果たす重要な役割を認識しているとし、誠意をもって協議を継続するとの考えを明らかにした。その一方で、MITIは、マレーシアとしては「一方的措置が両国の事業活動やサプライチェーン、投資の流れを阻害する可能性がある」とも指摘し、マレーシアの企業、労働者、消費者の利益を保護することに引き続き尽力し、関税の影響を軽減するあらゆる措置を講じるとも付け加えた。
ザフルル・アジズ投資貿易産業相は、ブラジルで開催されたBRICSサミットからの帰路、「25%の課税は予想外」としつつ、「8月1日まではまだ時間がある」ため、米国との交渉を継続すると確約した。産業界も、政府による迅速な対応を要請している。マレーシア製造業連盟(FMM)は7月8日付の声明で、ベトナムなど一部の国が米国との協定締結により関税率引き下げに成功したことを引き合いに、マレーシアがこれらの国に対して競争上不利にならぬよう、外交的対応を強化するとともに、早急に国内支援策を導入するよう求めた。
(吾郷伊都子)
(マレーシア、米国)
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