ベルギー連邦政府、2030年のGHG排出削減目標に向けた計画発表
(ベルギー、EU)
ブリュッセル発
2025年08月06日
ベルギー連邦政府は7月21日、連邦エネルギー・気候計画(PNEC)の2025年の最終版を発表した。欧州気候法で定められた2050年までの気候中立の実現に向け、排出削減の分担に関する規則(ESR)に基づき、2030年までに2005年比で国内輸送、建物、農業分野などでの温室効果ガス(GHG)排出を47%削減することを含む、2030年のGHG排出削減に向けた投資の方向性などを示した。今後、地域政府(注)と「国家エネルギー・気候計画(NECP)」として統合し、9月末までに欧州委員会に提出する見込みだ。NECP最終版の提出期日は2024年6月末で、ベルギーは未提出の3カ国のうちの1つとなっている(2025年6月13日記事参照)。
GHG排出削減に向けた地域政府を支援するための連邦政府の主な政策は次のとおり。
【主な税制控除措置】
- ゼロエミッション輸送、エネルギー効率の向上、再生可能エネルギー(再エネ)や環境配慮型の投資プロジェクトに対する税控除の拡大
- 社用自転車の付加価値税(VAT)控除(2023年8月15日付地域・分析レポート参照)
- 非ゼロエミッション社用車の税控除措置の段階的縮小(2025年6月19日付地域・分析レポート参照)
- カーシェアリングに対する税控除
- 輸送事業者向けディーゼル燃料に対する税還付制度の段階的縮小
- エネルギー課税の検討
- 海上輸送船のグリーン化
- 暖房設備に対するVAT税率改定(ヒートポンプは21%から6%に引き下げ、築10年以上の住宅向けの化石燃料ボイラーの設置は6%から21%に引き上げ)
- 建物の解体と再建に係る軽減税率の適用範囲を拡大
【企業向けの主な措置】
- エネルギー多消費産業向けに、電力価格を近隣諸国の水準まで引き下げるための送電料の引き下げ
- クリーンへの移行を目的とした投資の控除率を現行の30%から40%に引き上げ
- 社用車以外の交通手段の選択拡大
- マルチモーダル促進のための投資
同計画によると、エネルギー転換に原子力は重要で、投資を促進し、既存の発電所の拡張、新設を可能とする枠組みの整備が必要という。また、エネルギー効率の向上や再エネ比率は拡大しているが、依然として一次エネルギーは輸入に依存しているため、エネルギー源と輸送経路の多角化を目指す。
(注)ベルギーは連邦制を採用しており、エネルギー、環境政策などは地域政府管轄だが、税制や再エネの利用、エネルギー効率化、低炭素燃料に関する規制、インフラ整備、電化、脱炭素を促進する措置などは連邦政府の管轄となっている。
(大中登紀子)
(ベルギー、EU)
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