北京市が最低賃金引き上げ、9月から月額2,540元に
(中国)
北京発
2025年08月01日
北京市の人的資源・社会保障局などは7月24日、同市の最低賃金基準を9月1日から引き上げると発表した。全日制労働者(正社員)の最低賃金基準が月額2,420元(約5万820円、1元=約21円)から120元増の2,540元となる。なお、社会保険(養老保険、医療保険、失業保険、労災保険)と住宅積立金の個人負担分、残業手当、夜間勤務や高温、低温、地下、有毒有害物などの特殊な作業環境・条件下での手当などは含まれない。
非全日制労働者(パート)の最低時給基準は26.4元から27.7元(法定休日に勤務した場合の同基準は62元から65.1元)に引き上げる。この基準には、養老・医療・失業保険料の企業と労働者本人それぞれの負担分が含まれる。
最低賃金基準の調整は、国の人的資源・社会保障部が定める「最低賃金規定」で、少なくとも2年に1度実施することを義務付けている(注1)。前回、北京市の最低賃金は2023年9月1日に調整していた(2023年7月25日記事参照)。また、北京市政府が7月10日に発表した「北京市改革深化・消費振興特別行動プラン」では、所得向上と負担軽減によって消費力を向上させるため、最低賃金引き上げなどによって賃金収入を増加させることを盛り込んでおり、今回の改定は同プランを具体化したものとなる(注2)。さらに、北京市統計局は7月17日、同市の消費は成長を維持しているが、住民の消費マインドと消費意欲を高める余地が残されおり、次の段階として消費振興特別行動プランを着実に実施し、消費市場の発展を推進すると解説していた(注3)。
なお、2025年以降、上海市(2,740元)、広東省(2,500元)、四川省(2,330元)、重慶市(2,330元)、福建省(2,265元)、広西チワン族自治区(2,200元)、山西省(2,150元)、貴州省(2,130元)、青海省(2,080元)、新疆ウイグル自治区(2,070元)でも、最低賃金の改定(引き上げ)を行っている(「中国網」6月1日、注4)。
人的資源・社会保障部が7月15日に公表した中国各省・直轄市・自治区の最低賃金基準(2025年7月1日時点)をみると、最も高いのは上海市(2,740元)、次いで広東省(2,500元)、江蘇省・浙江省(2,490元)、北京市(2,420元)となっていた。今回の改定が実施されると、北京市の最低賃金は首位の上海市に次ぐ水準となり、上海市との最低賃金の差は200元に縮小することになる。
(注1)「最低賃金規定」によると、最低賃金基準の決定、改定については、省・自治区・直轄市政府の人的資源・社会保障部門が同級の労働組合、企業団体と協議の上で案を策定し、人的資源・社会保障部に提出する。人的資源・社会保障部は案を受領後、全国総工会(労働組合の全国団体)、中国企業連合会/企業家協会の意見を聴取し、案に修正意見を提出することができる。案を受領後14日以内に修正意見を提出しない場合、同意したものとみなされる。
(注2)「北京市改革深化・消費振興特別行動プラン」は、中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁が3月16日に発表した「消費振興特別行動プラン」(2025年3月24日記事参照)を受け、北京市政府が打ち出した関連政策となる。
(注3)北京市統計局は7月17日、北京市の2025年上半期の経済状況について「安定的に推移し、改善傾向にある」と評価した。同統計局の発表によると、同市の同期の実質域内総生産(GRP)成長率(前年同期比)は5.5%となった。また、住民1人当たり可処分所得と消費支出はそれぞれ、前年同期比5.1%増(実質)の4万5,144元、同2.8%増の2万4,847元だった。一方、消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同期比マイナス0.3%だった。2025年第2四半期(4~6月)の消費者信頼感指数は95.3で、前期から3.8ポイント低下した。
(注4)かっこ内の金額はいずれも改定後の金額。域内の経済発展水準によって、最低賃金基準を1~4段階で設けるケースが多いが、その場合は最も高い額を記載。
(蔣春霞)
(中国)
ビジネス短信 8efd8a2967e558d8