カナダの針葉樹材産業の競争力強化などに向けた新施策発表
(カナダ)
トロント発
2025年08月07日
カナダのマーク・カーニー首相は8月5日、針葉樹材産業の競争力強化と持続可能な成長を目指す新たな政策パッケージを発表した。
同国の針葉樹材は2024年に生産量の66%が輸出され、そのうち90%が米国向けだった。今回の政策パッケージは、2025年4月14日に米国商務省がカナダ産針葉樹材に対するアンチダンピング税(AD)と補助金相殺関税(CDV)を大幅に引き上げたことを背景に(2025年4月14日記事参照)、国内生産力の低下や米国による関税措置といった同産業が直面する課題に対応するものとなっている。
具体的には、住宅建設や主要インフラ整備で、木材産業の潜在力を最大限に引き出す方針を示すとともに、カナダの資源と技術革新を基盤とした長期的な経済成長の促進を目指すため、次の支援策を盛り込んだ。
- 針葉樹材産業の資金支援:針葉樹材産業の緊急課題に対応するため、最大7億カナダ・ドル(約749億円、Cドル、1Cドル=約107円)の融資保証により、企業の事業維持と再構築を支援する。
- 製品・市場の多様化に5億Cドル投資:国内での加工と高付加価値製品の生産を推進し、拡大する針葉樹材需要に対応する。また、先住民族による林業事業の成長と多様化も支援する。
- 「ビルド・カナディアン(Build Canadian)」政策推進:公共建設でカナダ産木材の使用を優先し、契約企業に調達を義務付ける。「カナダの家を建てる(Build Canada Homes)」制度により、革新的な住宅建設業者への資金支援も実施する。
- 国外市場の開拓:持続可能な木材製品の輸出先を多様化し、成長市場での需要に対応するとともに、連邦プログラムを活用して国外展開を支援する。
- 労働者支援に5,000万Cドル計上:6,000人以上の労働者に再訓練・所得支援を提供し、雇用保険制度も強化する。
カーニー首相は、林業はカナダ経済の柱だと強調し「世界情勢が変化する中で、自国の強みを生かし、カナダの専門性と木材を用いて、より強い国づくりを進めていく」と述べた。
(井口まゆ子)
(カナダ)
ビジネス短信 8bb328f4be75f5de