米商務省、カナダ産針葉樹材へのアンチダンピング税を2倍以上とする見直しを公表、カナダ経済への影響に懸念の声

(カナダ、米国)

トロント発

2025年04月14日

米国商務省は4月9日、カナダ産針葉樹材に対するアンチダンピング税(AD)の6回目の見直し(第6次行政予備評価:AR6)において、AD税を2倍以上に引き上げる暫定結果を官報で公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。カナダ林業への、深刻な経済的負担が懸念されている。

米国は、カナダがスタンページ制度(注)を運用することで、カナダ製木材が不当に安い価格で米国に輸出されているとし、長年にわたりADと補助金相殺関税(CVD)を課している。今回のAR6で暫定的に決定された関税率は、キャンフォー(本社:ブリティッシュ・コロンビア州)に対しては現行の16.58%から46.48%へ、ウェスト・フレイザー(本社:ブリティッシュ・コロンビア州)に対しては現行の11.89%から26.05%、その他企業に対しては、ADとCVD合計で現行の14.4%から34.45%への引き上げとなっている(添付資料表参照)。2024年9月24日に発効された現行の米国輸入関税はカナダの林業に既に影響を及ぼし、キャンフォーは同年9月にブリティッシュ・コロンビア州内2カ所の製材所の閉鎖を発表し、500人の雇用に影響が出ていた。

ブリティッシュ・コロンビア州のデビット・エビー首相は、米国商務省による暫定結果は森林労働者や州民に対する攻撃であると非難する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。エビー氏は「住宅価格の引き下げを公約に当選した大統領が、米国人の住宅価格を上昇させることになる」とも指摘した上で、同州の主要針葉樹材産業の将来に不安を感じていると述べた。

カナダ最大規模の民間労働組合ユニフォーは、カナダ全土の林業部門を支援する「チーム・カナダ」のアプローチを提唱。同組合のラナ・ペーン会長は、カナダが直面している住宅不足や価格高騰に対応するため、カナダ産の木材を使用して手頃な価格の住宅を建設し、輸出への依存を減らすための国家戦略の必要性を強調するとともに、連邦および州政府に対し林業運営を支援し雇用を守るよう求めた。ユニフォーは10州にまたがる2万2,100人を超える林業労働者を代表しており、経済的保護や財政支援計画を積極的にロビー活動している。

米国商務省による第6次行政予備評価(AR6)の最終決定の発表は8月に予定されている。また、CVDの行政予備評価は春後半に発表される予定で、結果によっては今回引き上げられたADと相まって、カナダ産針葉樹材に対する関税率がさらに引き上げられる可能性がある。

(注)カナダにおける州有林・連邦有林の伐採権を払い下げる制度。米国の製材業界は、カナダの製材がスタンページ制度での低い立木価格の設定により安価で輸出され、米国で高い市場シェアを維持している、と問題視している。

(井口まゆ子)

(カナダ、米国)

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