大連で、世界初となる船舶用グリーンアンモニア燃料の補給実施

(中国)

大連発

2025年08月15日

中国遠洋海運(COSCO SHIPPING)の発表によると、同社傘下の中石化中海船舶燃料供応は7月25日、遼寧省大連市で5,500馬力(HP)のアンモニア動力港湾作業船に対し、世界初となる船舶用グリーンアンモニア(注1)燃料の補給を行った。これにより、大連港は世界で初めて、船舶用代替燃料のバイオ燃料、グリーンメタノール、液化天然ガス(LNG)、グリーンアンモニアの補給能力を備える港となった。

今回補給したグリーンアンモニアは中国の内モンゴル自治区から調達したもので、100%グリーン電力で製造しており、「グリーン電力によるアンモニア製造→グリーンアンモニア輸送→燃料補給→船舶運航」というバリューチェーン(価値連鎖)を実現した。卓越したライフサイクルアセスメント(LCA、注2)により、国際持続可能性カーボン認証(ISCC PLUS、注3)を取得した上で、国際的な検査機関ビューローベリタス(Bureau Veritas、注4)の再生可能アンモニア認証を世界で初めて取得した。

アンモニア燃料の補給を今回行った港湾作業船は中国初のアンモニア動力船で、自主開発によるアンモニアデュアルフューエルエンジン(注5)や、アンモニア燃料供給システム、アンモニア燃料タンクなどのコア設備を搭載している。主甲板の両側に配置した2基の全圧式アンモニア燃料タンクは、燃料の主機関への安定供給を可能にし、アンモニアエネルギーの最大代替率は91%に達している。

大連市では、7月15日に中国東北地域初の保税グリーンメタノール燃料の補給作業が中遠海運洋浦(COSCO SHIPPING YANGPU)号に対して行われ(2025年7月30日記事参照)、同月20日には中国北方地域初の新造LNG輸送船クールダウンタンク(冷却艙)への燃料補給作業が行われるなど、グリーン燃料の供給能力向上の動きが見られる。

2021年10月26日に国務院が公布した「2030年までのカーボンピークアウト達成行動計画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」では、「グリーン交通インフラの整備を加速させ、充電スタンド、電力網、燃料補給(LNG/CNG)ステーション、水素ステーションなどのインフラ建設を進める」ことを明確に掲げている。2024年8月16日に交通運輸部などの13部門が共同で公布した「交通運輸大規模設備更新行動方案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」でも、「新エネルギー・クリーンエネルギー燃料輸送船のインフラ整備を推進し、LNG、バイオディーゼル、グリーンメタノールなどの燃料の補給、充電・電池交換サービスの供給能力を保障する」ことなどを挙げている。この度の船舶用アンモニア燃料の補給も、これらの一環と位置付けられたものとみられる。

(注1)クリーン電力を用いた水の電気分解によって水素を製造し、空気分離装置を駆動して窒素を得た後、水素と窒素を反応させて合成するアンモニアのこと。その生産過程で炭素排出強度はほぼゼロに等しく、伝統的な化石燃料の代替として高い潜在力を持ち、化学、海運などの分野の脱炭素・排出削減に重要な役割を果たすと期待されている。

(注2)ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)、またはその特定段階の環境負荷を定量的に評価する手法。

(注3)バイオマス、バイオエネルギーの認証制度。廃棄物原料の生成から加工、輸送、最終製品輸送までのサプライチェーン全体への認証が必要とされる。

(注4)ビューローベリタスは、1828年にフランス船級協会として設立以来、世界最大級の第三者試験・検査・認証機関となっている。

(注5)アンモニアを主燃料とし、他の燃料(水素やディーゼルなど)を補助燃料として使用するエンジンのこと。

(呉暁東)

(中国)

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