大連で中国東北地域初の保税グリーンメタノール燃料の補給実施
(中国)
大連発
2025年07月30日
中国海関総署の7月17日の発表によると、中国船舶燃料大連は同月15日、メタノール燃料補給船〔バンカリング(注1)船〕の「海港致遠号」から、中遠海運洋浦(COSCO SHIPPING YANGPU)号(COSCOグループが建造)に対して、500トンの中国産保税グリーンメタノール燃料の洋上補給を行った。これは東北地域初の国際航行船舶向け保税扱いでのグリーンメタノール燃料供給となった。
大連港を運営する遼寧港口集団(注2)の発表によると、中遠海運洋浦号は中国初のメタノール二元燃料(注3)で航行するコンテナ船で、全長366メートル、幅51メートル、最大積載量は1万6,136TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算)、1万1,000立方メートルの大容量メタノール燃料タンクを備えており、就航後は東アジア発米国東海岸行きの片道航路を燃料補給なしに航行できる。メタノール燃料補給を今回行った海港致遠号はタンク容量1万6,000立方メートルで、中国で初めて就航したメタノール燃料補給船だ。
今回補給した500トンのグリーンメタノールは全て、黒龍江省や内モンゴル自治区から調達したもので、廃タイヤや農業廃棄物などを原料として製造されたものとなる。また、同燃料は二酸化炭素(CO2)排出量を800トン以上削減し、生産・貯蔵・輸送・補給までの全工程で国際持続可能性・炭素認証(ISCC、注4)を取得している。
遼寧港口集団の発表によると、中国東北地域は風力と太陽光のエネルギー資源が豊富で、グリーンメタノール産業の優位性がある。同地域で現在建設中、または計画中のグリーンメタノールとグリーンアンモニアの生産プロジェクトは75件あり、生産能力は全中国の80%以上を占めており、世界のグリーン船舶燃料の主要生産拠点へと成長しつつある。
大連港はバイオ燃料、グリーンメタノール、液化天然ガス(LNG)、アンモニアなど船舶用代替燃料の補給能力を備えている。また、遼寧港口集団傘下の大連港と営口港は合わせてメタノール専用の11バースと総容量45万立方メートルのタンクを有し、年間200万トン分のグリーンメタノールの貯蔵・輸送能力を確保しており、これを3年以内に400万トンに引き上げる見込みとなっている。
(注1)岸壁に係留中の液化天然ガス(LNG)燃料船に、岸壁に駐車したLNGタンクローリーからLNGを供給する手法。
(注2)遼寧港口集団は2019年に遼寧省大連市で設立され、同省の港湾物流事業の統合運営プラットフォームとして、中国東北部最大の総合ターミナル運営会社となっている。主に石油・液体ケミカルターミナル、コンテナターミナル、自動車ターミナル、ばら積み貨物ターミナル、バルク穀物ターミナル、旅客ROROターミナルなどの運営を行っている(2023年7月11日記事参照)。
(注3)従来の重油などの燃料に加え、メタノールも燃料として使用できるコンテナ船。
(注4)バイオマス、バイオエネルギーの認証制度。廃棄物原料の生成から加工、輸送、最終製品輸送までのサプライチェーン全体への認証が必要とされる。
(呉暁東)
(中国)
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