米国の対南ア相互関税は30%で確定
(南アフリカ共和国、米国)
ヨハネスブルク発
2025年08月04日
米国のドナルド・トランプ大統領は7月31日、追加関税を8月7日から課す大統領令に署名した。この大統領令では、南アフリカ共和国から米国市場への輸出品に30%の関税を課すことを確定させた。この決定は、両国間の合意に向けた交渉が不調に推移していることを示唆している。
トランプ政権は「南アの貿易障壁が米国に多額の貿易赤字をもたらしている」と主張していたが(2025年7月9日記事参照)、貿易関係のみならず、南アの土地改革政策、国際司法裁判所へのイスラエルの提訴、そしてBRICSの一角を占めるといった諸政策や立場に対しても不満を隠しておらず(2025年5月23日記事参照)、南アに対する政治的圧力は依然として弱まっていない。対照的に、今回の大統領令では、他のサブサハラ諸国のほとんどの国は、南アに対する税率の半分(15%)となった。4月時点では、最貧国にもかかわらず世界的に見ても高関税が課せられる(2025年7月15日記事参照)と話題になったレソト(4月時点で50%)やマダガスカル(同47%)も15%に引き下げられたが、理由は明らかになっていない。
いずれにしてもこの税率は、南アの自動車、農産加工、鉄鋼、化学品などの産業部門に甚大な影響をもたらすことが懸念される。当地のビジネス・デー紙は、同日の取引終盤で通貨ランドが約3%下落したと報じたほか、南ア準備銀行(SARB)金融政策委員会(MPC)は7月31日、この関税の影響を理由に、同国の経済成長見通しを1.2%から1%に下方修正した。
ただ、シリル・ラマポーザ南ア大統領は報復措置を否定し、「政府は米国と交渉を続けており、(既に)互恵的な貿易・投資関係の強化を目指す枠組み案を提出した。米国との交渉のためのあらゆるコミュニケーション手段は開かれており、交渉担当者は米国からの要請を待つ準備ができている」との声明を出した。
また、同大統領は、影響を受ける企業を支援するための方策を検討しており、詳細を近く発表するとした。貿易産業競争省(DTIC)は、企業が代替市場を開拓できるよう支援するための輸出支援デスクを設けた。経済団体ビジネス・リーダーシップ・サウスアフリカ(BLSA)も「企業を支援するため、関税影響基金を直ちに設立するとともに、影響を受ける業界と協力して代替市場を開拓すべきだ」と提言している。
(的場真太郎、トラスト・ムブトゥンガイ)
(南アフリカ共和国、米国)
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