米国、対ナイジェリア関税を15%に引き上げ、連邦政府は冷静に対応

(ナイジェリア、米国、アフリカ)

ラゴス発

2025年08月12日

米国のドナルド・トランプ大統領が7月31日に署名した大統領令(2025年8月1日記事参照)により、対ナイジェリア関税率が4月時点の14%から1ポイント引き上げられ、15%に改定された。この関税は8月7日から原則適用される。これにより、これまでアフリカ成長機会法(AGOA、注1)により米国向け輸出で適用されてきた免税が対象外となる(注2)。

ナイジェリアのジュモケ・オドゥウォレ産業貿易投資相は4月の14%関税発表時に、米国による関税引き上げが世界貿易に悪影響を及ぼす可能性を指摘しつつ、米国を重要な貿易・投資パートナーと位置づけ、両国の共有する価値観と経済的利益を強調してきた。同大臣は今回の15%への改定に対しても、離任するリチャード・M・ミルズ・ジュニア駐ナイジェリア米大使との会談で、税引き上げを認めつつ、米国からの投資や技術移転の機会を提示し、ナイジェリアが米国投資家にとって魅力的な市場であることを訴えて、冷静に対応する姿勢を見せた。ミルズ大使も、アフリカ最大規模の商業市場のナイジェリアとの貿易関係を深化させる目標を再確認した。

ジュモケ産業貿易投資相によると、ナイジェリアから米国への輸出は石油、鉱物燃料、石油製品、ガス関連製品が90%以上を占め、肥料や窒素化合物が2~3%、鉛が1%、農産物で2%未満となっている。ナイジェリアは、非石油産品の輸出拡大を目指し、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)を利用した域内貿易や(2025年5月21日記事参照)、BRICSとの連携強化を進めている(2025年7月23日記事参照)。

トランプ大統領がBRICS加盟国への10%追加関税の検討を表明していることや、9月30日に期限が切れるとされるAGOAの動向も注目される。

ナイジェリア製造業者協会(MAN)は米国の4月の14%関税発表時、同関税が自国の製造業に打撃を与え、輸出収入を減らし、経済成長を阻害する可能性があると懸念を表明した。ラゴス商工会議所(LCCI)は、BRICSとの連携に伴う米国の報復関税が経済に脅威をもたらすとし、ナイジェリア連邦政府に対して米国との交渉を求めている。

(注1)アフリカ成長機会法(AGOA)は、米国がサブサハラ・アフリカ諸国に提供する特恵関税制度で、2000年に施行。対象国の非石油輸出品を無税または低関税で米国にアクセスさせ、経済成長と貿易促進を促すもの。

(注2)現時点では、石油・ガスや多くの重要鉱物の輸出が関税の対象外とされている。

(奥貴史)

(ナイジェリア、米国、アフリカ)

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