WTOパネル、EUの対インドネシア相殺関税を協定違反と判断
(インドネシア、EU)
ジャカルタ発
2025年08月28日
WTOの紛争処理小委員会(パネル)は8月22日、インドネシアが2023年に提訴した、欧州委員会が2019年から導入したインドネシア産バイオディーゼルの輸入に対する相殺関税措置について、EUの相殺関税を協定違反とする最終報告書を発表した。インドネシアは2023年10月13日、紛争解決に係る規則および手続きに関する了解に基づき、WTOにパネルの設置を要請した。これを受け、同年11月27日の会合において、紛争解決機関(DSB)はパネルを設置していた。WTOのパネルは、パーム油を原料としたバイオ燃料の輸送用燃料への使用を2030年までに禁止すべきとのEU規則についても、2025年1月に最終報告書(注)を提出していた。
今回のパネルの判断により、バイオディーゼルの原料となる「パーム粗油(CPO)」について、インドネシア政府が輸出税や輸出賦課金を通じて国内のCPO価格を下げ、民間供給業者に適正価格を下回る価格で国内のバイオディーゼル生産者にCPOを供給するよう「委託または指示」したという認定は誤りであると結論付けられた。また、同認定に基づき、欧州委員会が相殺関税を課したことは、WTOの補助金および相殺措置に関する協定(SCM協定)に違反するとされた。さらに、欧州委員会がインドネシアからの輸入はEUの産業に「実質的な損害の脅威」を与えていると認定したことも、WTO協定に違反するとされた。これを受け、WTOは欧州委員会に対して、SCM協定に適合させるよう勧告した。
他方、インドネシア政府の「パーム油農園基金(OPPF)」については、パネルは欧州委員会の認定が協定違反であることをインドネシア側が立証できなかったと判断した。OPPFにひもづく相殺関税は、引き続き適用される可能性がある。
ブディ・サントソ商業相は8月25日に発表した声明で、今回のWTOの決定を歓迎したうえで、「インドネシア政府が国際貿易ルールを一貫して順守していることを証明するもの」と述べ、EUに対し「WTOルールに整合的でないEUの相殺関税措置を直ちに撤廃するよう強く求める」と強調した。
インドネシアパーム油事業者協会(GAPKI)のエディ・マルトノ会長は、WTOの判断を「インドネシア産パーム油由来のバイオディーゼルに対する非関税障壁が撤廃される可能性を示す前向きなシグナル」と評価した。ただし、その実現には「欧州委員会がこの判断を受け入れ、上訴しないことが前提だ」と述べた。また、EU向けの輸出の増加のためには「(インドネシア政府による)森林破壊規則(EUDR)への対応が鍵を握る」と強調した(8月26日付、コンパス)。
(注)WTOは2025年1月のパネルの最終報告書において、パーム油を原料としたバイオ燃料の輸送用燃料への使用を2030年までに禁止すべきとのEU規則について、インドネシアの訴えを認め、EUの措置がWTO協定違反にあたると認定した(2025年3月3日記事参照)。
(大滝泰史)
(インドネシア、EU)
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