中国、幼稚園最終学年の保育・教育費を免除
(中国)
北京発
2025年08月14日
中国国務院弁公庁は8月5日、「就学前教育無償化の段階的推進に関する意見」(以下、意見)を発表した。
意見では、2025年の秋学期から、全国の公立幼稚園に在園する最終学年の園児を対象に、保育・教育費を免除するとした(注1)。教育部門が設立を認可した私立幼稚園に通う児童に対しては、現地の公立幼稚園の免除額を基準に保育・教育費を減額・免除する。
免除基準について、県級市以上の地方政府およびその教育・価格主管部門が承認した公立幼稚園の保育・教育費徴収基準(注2)に基づき免除を実行するとし、給食費、宿泊費、雑費などは免除対象外となる。
この免除措置による幼稚園収入の減少分については、免除対象となる園児の数、所在地における1人当たりの保育・教育費の実際の徴収水準などを踏まえ、財政部門が幼稚園に対して補助金を支給する。補助金支給のための原資は、中央財政と地方財政が共同で負担する。具体的には、中央財政から、西部、中部、東部の各地域に対し、それぞれ8割、6割、5割の割合で補助を行う(注3)。
財政部の郭婷婷副部長は8月7日に開催された国務院の政策説明会で、就学前教育無償化の段階的な推進は、人々の生活の保障および改善や、長期的かつ均衡のとれた人口の発展を促進するために重要な戦略的措置であると述べた。また、本意見は、出産、育児、教育にかかるコストの軽減に向けた政策体系の要となる部分であり、公的教育サービスの向上、教育の公平性促進、出産・育児に優しい社会の構築にとって非常に重要な意義があると説明した。
清華大学教育学院の李鋒亮副院長は「教育費は中国の家庭支出において非常に大きな割合を占めており、高い教育費は国民の消費支出を抑制する要因となっている」と指摘した。その上で、本意見について「就学前教育無償化の段階的な推進は、国民による教育分野以外の消費を一定程度促進し、より多くの産業分野における雇用と発展を後押しする効果が期待できる」とコメントした(「人民日報」、7月27日)。
中国政府は子育て世帯の負担軽減に向け、3歳以下の乳幼児の養育費の個人所得税控除や休暇・医療制度の整備などの支援措置を打ち出している。7月28日には、3歳以下の乳幼児に対して年間3,600元の補助金を支給する措置を発表した(2022年4月6日記事、2024年11月1日記事、2025年8月4日記事参照)。
(注1)中国の新学年は9月から始まる。
(注2)地域により異なるが、北京市政府の公式サイトで公表されている北京市公立幼稚園の保育・教育費の料金徴収基準によると、子供1人の1カ月の保育・教育費は、幼稚園の等級に応じて、250元(約5,000円、1元=約20円)以下から900元以下まで設定されている。
(注3)財政部の郭婷婷副部長は8月7日の政策説明会で、2025年の秋学期で約1,200万人の園児が免除対象となり、それに伴う財政支出は約200億元となり、その分の家計支出が削減される見通しであると言及した。
(張敏)
(中国)
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