遼寧省瀋陽市で磁気軸受産業基地が稼働

(中国)

大連発

2025年08月14日

瀋陽日報(瀋陽市共産党委員会機関紙)の報道によると、中国・遼寧省瀋陽市で8月9日、瀋陽微控飛輪技術の新工場である磁気軸受産業基地の開業式典が開催された。同報道では、同社の磁気軸受技術を用いたフライホイールの蓄電製品(注1)の生産拡張は、遼寧省の新エネルギー産業の高度化に貢献し、「蓄電の都」を目指す瀋陽市にとって強力な一助となると指摘している。

蓄電システムは、化学的システムと物理的システムの2種類に大きく分けられる。化学的な蓄電システムは、リチウムイオン電池、レドックスフロー電池(注2)などが代表的であり、物理的な蓄電システムは、フライホイール蓄電システムなどが代表的で、回転エネルギーとして電気を蓄える。

フライホイール蓄電システムは、化学電池と比べ、充放電の繰り返しによる劣化が少ないこと、また、摩耗によるメンテナンスが不要になることなどのメリットがあり、瞬時的な電力供給や電力系統の安定化、再生可能エネルギーの利用促進など幅広い分野で活用されている。

瀋陽微控飛輪技術は、2018年設立で、遼寧省製造業初のユニコーン企業となっている。また、瀋陽日報によれば、国内外の特許を100件以上取得済みという。さらに、同社はフライホイール蓄電技術の国家標準の策定に参画しており、電力システムの周波数調整やデータセンター分野で、世界市場でも高いシェアを維持しているとされている。

今回開業した磁気軸受産業基地は「グローバル・ライトハウス工場(注3)」を目指しており、総投資額は20億元(約400億円、1元=約20円)で、2期に分けて建設される。第1期は4億元を投資し、6万5,000平方メートルの工場とR&D(研究開発)センターを完成させる見込みだ。本稼働後には、年間1万1,000台のフライホイール蓄電設備を製造でき、総生産額は年間50億元に達する見込みとなっている(「瀋陽日報」8月10日)。

2024年6月に、瀋陽市が同市の「蓄電産業発展規画(2024~2030年)」で発表した方針によると、瀋陽市は2030年までに全市の蓄電産業の売上高を1,000億元に引き上げ、競争力のあるリーディング企業10~15社を育成し、関連企業50~80社を集積する目標を掲げている。

瀋陽日報の報道によると、瀋陽微控飛輪技術のほかにも、瀋鼓集団(水素圧縮機)、遠大圧縮機、恵州億緯鋰能(EVEエナジー)など新エネルギー分野の有力企業が瀋陽市に多く進出しており、同市では、水素、風力、原子力、蓄電など多様な分野にわたる新エネルギー産業のエコシステムが構築されつつある。

(注1)真空に保たれた容器の中に入れたフライホイールという回転盤を回転させることで電気を蓄える装置。

(注2)レドックスフロー電池は、バナジウムなどのイオンの酸化還元反応を利用して充放電を行う蓄電池。電極や電解液の劣化がほとんどなく長寿命であり、発火性の材料を用いていないことや常温運転が可能なことから安全性が高いなど、電力系統用蓄電池に適した特性を持っている。このため、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入を拡大していく上で必要となる系統の安定化技術として期待されている。

(注3)「ライトハウス(Lighthouse)」は、先端技術を積極的に活用し、生産性の向上や品質の改善、コスト削減、環境負荷の低減などを実現している工場のことを指す。DXの推進を支援する目的のもと、世界経済フォーラムが2018年からスタートさせたもので、毎年、世界各地の工場が選ばれている。

(李莉)

(中国)

ビジネス短信 43158f2ad8b1675a