7月の製造業PMI、4カ月ぶりに節目の50超へ好転

(ベトナム)

ホーチミン発

2025年08月19日

米国の調査会社S&Pが8月1日に公表したレポートによると、7月のベトナム製造業購買担当者景気指数(PMI、注1)は、前月の48.9から52.4へ上昇し、4カ月ぶりに景気判断の節目となる50を上回った(添付資料図参照)。

PMIを構成する各項目をみると、輸出向けの新規受注は、米国関税措置による海外市場の混乱の影響により9カ月連続で縮小となった。一方、国内需要の回復により、全体の新規受注は4カ月ぶりに増加した。新規受注の拡大に伴い、生産量は3カ月連続で増加した。雇用は、工場の生産能力に余剰があるため引き続き減少したが、そのペースは過去9カ月で最も緩やかとなり、安定に向かいつつある。

同社経済部門責任者のアンドリュー・ハーカー氏は、同レポートの中で「ベトナムの製造業は、米国関税措置による影響を他のビジネス領域で補い、立ち直りつつある。一方、原材料の調達難がサプライヤーの納期遅延やコスト上昇を招いており、今後の成長に制約がかかる可能性がある」と述べた。

ベトナムにとって最大の輸出先である米国では、関税引き上げに伴う価格転嫁の影響が消費者物価指数(CPI、注2)に表れ始めるなど、経済減速の兆候もみられる(2025年7月16日記事参照)。直近では、米国労働省が8月12日に発表した7月のCPIが前年同月比2.7%上昇と市場予想の2.8%を下回った一方、価格変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は3.1%上昇し、引き続き物価上昇圧力がうかがえる。現時点では物価全体の急上昇には至っていないものの、企業による関税の価格転嫁が進む中、米国市場の動向にも留意が必要だ。

(注1)製造業の購買責任者を対象に、生産高や新規受注、在庫水準、雇用状況、価格などの状況を評価する指数。0から100の間で変動し、50を超えると「前月比で改善や増加」、50未満は「前月比で悪化や減少」を表す。

(注2)一般消費者が購入する商品やサービスの価格変動を数値化した指標。物価の上昇や下落の度合いを測り、インフレ率算出や金融政策判断の基礎となる。

(安部暢人)

(ベトナム)

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