米相互関税、バングラデシュは20%で合意、繊維輸出の競争力維持との反応

(バングラデシュ、米国)

ダッカ発

2025年08月04日

バングラデシュ政府は7月31日、米国向けの輸出に課される「相互関税」について20%で合意したと発表した。同日発令された米国の大統領令によると、相互関税は発令日から7日後の米国東部時間午前0時1分以降に通関した貨物に適用される。ただし、それまでに船舶に積載され最終輸送手段として輸送中で、2025年10月5日午前0時1分までに通関した場合は適用されず、ベースライン関税10%のみが課される(2025年8月1日記事参照)。

バングラデシュ政府は、相互関税率の交渉過程で、今後5年間で米国産小麦70万トンの輸入に合意(2025年7月23日記事参照)したほか、ボーイング製航空機25機をすでに発注し、今後1年半で計15億ドル分の米国産小麦や大豆、液化天然ガス(LNG)、くず鉄の購入を約束した、と報じられている(「インダストリー・インサイダー」7月29日)。綿花の輸入量増加や軍事装備品の購入についても、約束した可能性がある。米国政府は、60億ドルの貿易赤字の解消やバングラデシュの貿易における中国依存の見直しを要求していた。

今回の合意に関し、当地シンクタンクのポリシー・エクスチェンジ・バングラデシュのマスルール・リアズ会長兼CEO(最高経営責任者)は、ジェトロの取材(8月1日)に応じ「米国向け輸出の約90%は既製服(RMG)であり、競合国のベトナム、インド、パキスタンの交渉動向を注視していた。中国には大きな関税が課されるだろう。インドに対する相互関税率が25%と高くなり、ベトナムとパキスタン(19%)と同等の税率に収まったことで、わが国は競争力を維持できた。2国間で機密保持契約を結んでいるため、米国産品の輸入・購入に係る詳細は明らかにされていないが、公開情報から判断する限り、おおむね国益にかなう合意になったと思う」と述べた。また、ジェトロが合意前の7月30日に面会した、国内最大の業界団体である縫製品製造業・輸出業協会(BGMEA)のマフムド・ハサン・カーン会長は「相互関税率が15~20%で合意できれば、業界は何とかなるだろう。相互関税率にかかわらず、われわれは今後、輸出先を多角化しリスクを抑える必要がある。縫製品の20%は米国、50%はEUに輸出されている」と述べていた。

バングラデシュ暫定政権のムハンマド・ユヌス首席顧問は「われわれの交渉団は、米国から35%と提示されていた関税率を20%に引き下げ、バングラデシュの経済的利益の保護・推進のために卓越した戦略的スキルと揺るぎない決意を示した」とのメッセージを発出した。交渉団を率いたカリルール・ラフマン国家安全保障担当顧問は「繊維産業の保護が最優先事項だったが、われわれは米国産農産品の購入の約束に焦点を当てた。相互関税率35%の回避は、繊維産業に従事する数百万人にとって良いニュースだ」と語った。シェイク・ボシール・ウディン商業担当顧問は「20%の相互関税が課されても、われわれは競争力を維持できる。しかし、20%未満での合意を期待していた」として、悔しさをにじませた。

(片岡一生)

(バングラデシュ、米国)

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