第17回ASEAN事務総長との対話を開催、在ASEAN日系企業がビジネス環境改善を要望
(ASEAN、マレーシア、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス)
ジャカルタ発
2025年08月14日
ASEAN日本人商工会議所連合会(FJCCIA)(注)は7月29日、カオ・キムホンASEAN事務総長との対話を開催し、同地域のビジネス環境改善を要望した。2008年から続く本対話は今回で17回を数え、ジェトロは運営機関として参画している。
日本側からは、各国の日本人商工会議所会頭や中條一夫ASEAN日本政府代表部公使(臨時代理大使)、片岡進ジェトロ副理事長のほか、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)、経済産業省、日アセアン経済産業協力委員会(AMEICC)事務局の代表者らが出席した。
ASEANの首脳は2025年5月、ASEAN共同体ビジョン2045のうち、経済面の実行計画を定めた「AEC戦略計画(2026年~2030年)」を採択した(2025年6月2日記事参照)。FJCCIAが取りまとめた要望は、同戦略計画を念頭に、「強靭(きょうじん)なサプライチェーン」「グリーン経済とサステナビリティ」「デジタル経済とイノベーション、新興技術」「包摂的なASEAN」の4つの柱で構成された。ベトナム日本商工会議所の会頭であり、2025年のFJCCIA議長である若林浩一氏は、タイとカンボジア間の国境紛争の停戦合意を歓迎したうえで、世界の貿易環境は急速に、かつ、複雑に変化していると述べた。また同氏は、保護主義の台頭や米国の「相互関税」、希少鉱物のような戦略資源に対する制限が、サプライチェーンの再構築を促し、不確実性が増していると懸念を表明した。そのうえで、「日本企業にとって、ASEANはサプライチェーンの移転先としてますます適切な地域になる」と強調した。
カオASEAN事務総長は、ASEANと日本は過去数十年にわたり、多岐にわたる分野で永続的なパートナーシップを強化してきたとしたうえで、2008年の日ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)の署名以来、「貿易と投資の流れは着実に拡大した」と述べた。
対話では、カオASEAN事務総長が、ASEANの電力網を相互に接続し、地域全体で電力融通を可能にする国際送電網構想「ASEANパワーグリット」に言及。同氏は本構想について、「再生可能エネルギーに対する域内で高まる需要に対応するもの」としたうえで、「この構想を実現するためには、送電インフラの整備に10億ドルの投資が必要だ」と述べ、日本企業のさらなる事業参画への期待が示された。また、第2次改定交渉が妥結したASEAN物品貿易協定(ATIGA)について、リサイクルや再利用可能な製品(循環型製品)の国境を越える移動に関する法整備が整い、「循環型サプライチェーンの構築が促進される」と強調した。自動車分野については、「電気自動車やハイブリッド車など持続可能な輸送手段を通じた次世代型モビリティの普及や発展を目指す」と述べ、「日本企業が主導的な役割を果たすことを期待する」と強調した。デジタル分野については、「FJCCIAの提言は、ASEANのデジタル戦略を強固にするために不可欠なもの」と評価し、「ASEANのデジタル担当大臣など関係者と会合を持ち、ともに推進してほしい」とさらなる参画を求めた。
今回の対話の結果は、2025年9月にマレーシアで開催される日ASEAN経済大臣会合で報告される予定だ。
カオ・キムホンASEAN事務総長ら対話出席者による集合写真(ASEAN事務局提供)
(注)FJCCIAは、ASEAN加盟10カ国のうちブルネイを除く9カ国10組織の日本人商工会議所により構成される連合組織。2025年6月現在の会員数は7,304社。
(大滝泰史、尾崎航)
(ASEAN、マレーシア、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス)
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