米USTR、メキシコのコールセンターの労働問題巡るUSMCAパネル裁定結果を公表、米国の訴え認める

(米国、メキシコ)

ニューヨーク発

2025年08月25日

米国通商代表部(USTR)は8月21日、メキシコのコールセンターの労働問題を巡る米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づく労働紛争解決パネルの裁定結果を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。パネルは米国側の訴えを認めた。

USTRは2024年1月、メキシコ中部イダルゴ州のアテント・セルビシオスのコールセンターの労働問題を巡って、USMCAが定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づき、メキシコ政府に事実確認を要請した(2024年1月23日記事参照)。これに対し、メキシコ政府は同事業所で労働権侵害の事実を認定しつつも、事実確認の調査期間中にアテント・セルビシオスが是正措置を講じたと判断していた。一方で、USTRは、労働権侵害が完全には是正されていない可能性があるとして、パネルによる事実確認の検証を求めていた(2024年4月17日記事参照)。パネルは2025年5月に検証を実施し、メキシコで公聴会を開催した。

今回のUSTRの発表によると、パネルは同事業所で労働組合活動に対する不正干渉などの労働権侵害の事実を認定した。また、労働権侵害の深刻度合いや継続期間、労働権侵害が発生した構造的性質を考慮すれば、メキシコ側の是正措置は不十分だと結論付けた。

USTRのジェミソン・グリア代表は今回の発表に際して、「公平な競争条件の確保に努める米国の決意を強調するものだ」「米国は今後もこの革新的かつ効果的な紛争解決メカニズムを活用し、米国の企業と労働者を保護し、公正な貿易を推進していく」と述べた。

USMCAに基づく労働紛争解決パネルはこれまでに6件が設置されている。このうち、裁定結果が出たのは、2024年5月に米国側の訴えを退けた裁定(2024年5月16日記事参照)に続いて、今回が2回目だ。米国の訴えを認める裁定が出たのは今回が初めてとなる。残る4件は現在も係争中となっている(2024年12月16日記事12月20日記事参照)。

トランプ政権下でも、RRMに基づくメキシコ政府に対する申し立ては継続して実施されている。トランプ政権の「ビジネスと人権」に関する政策の展望は、2025年5月9日付地域・分析レポート参照

(葛西泰介)

(米国、メキシコ)

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