米エネルギー省、重要鉱物サプライチェーン強化に約10億ドルの資金提供を発表
(米国)
ニューヨーク発
2025年08月19日
米国エネルギー省(DOE)は8月13日、重要鉱物・材料の国内供給網強化に向け、総額約10億ドル規模の資金供与機会通知(NOFO)を発表する意向を示した。鉱山から製造・リサイクルに至るサプライチェーン各段階での技術導入・商業化・拡大を促進する。
今回のNOFOの対象は5分野に分かれる。第1は重要鉱物と材料の生産技術の高度化と商業化(約5,000万ドルを上限)で、希土類(レアアース)磁石、半導体用ガリウム・ゲルマニウム・炭化ケイ素、リチウムなどの広範囲にわたる生産技術の開発を対象とする。第2は廃棄物・副産物からの重要鉱物の回収
(約2億5,000万ドル)で、既存の産業施設における有用鉱物を副産物として回収する技術の向上を支援する。第3はレアアースの精錬・回収実証施設の整備
(DE-FOA-0003586、約1億3,500万ドル)で、鉱山尾鉱(注)や有害物質、廃棄物などからレアアースを抽出する技術の商業化を支援する。これには、学術機関との連携を必須とする。第4は電池材料の処理・製造・リサイクル
(DE-FOA-0003584、約5億ドルを上限)で、リチウム、グラファイト、ニッケル、銅、アルミニウムのほか、電池に利用される鉱物の処理、リサイクルなどの実証を行う施設や、商用化施設を支援する。第5はエネルギー高等研究局(ARPA-E)で行われる重要鉱物の回収技術の開発
(約4,000万ドル)で、産業排水から重要鉱物を回収する技術を促進する。なお第3、第4の分野では、資金受給者に50%超のコスト負担を義務付ける。公募の詳細に関しては各ホームページを参照。
米国では、レアアースや電池などで利用される多くの鉱物を、中国をはじめとした外国に依存している(2025年6月5日記事参照)。今回の資金提供は、そうした現状からの脱却と国内での製造基盤の再構築を目的に、ドナルド・トランプ大統領の大統領令である「米国のエネルギーを解き放つ」に基づき実施される(2025年1月22日記事参照)。DOEのクリス・ライト長官は「トランプ氏のリーダーシップにより、DOEは重要な材料の加工工程を国内に戻し、これら不可欠な資源の国内供給を拡大する上で主導的な役割を果たす」と述べ、国内供給強化の方針を強調した。
(注)金属や鉱物の回収過程で生じる一般的な副産物。
(大原典子)
(米国)
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