インド準備銀、政策金利を据え置き、大幅利下げ効果の浸透を注視

(インド)

ムンバイ発

2025年08月08日

インド準備銀行(RBI、中央銀行)は8月4~6日に金融政策決定会合(MPC)を開催し、政策金利(レポレート)を5.50%で据え置くことを全会一致で決定した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(添付資料図参照)。金融政策スタンスは「中立(neutral)」を維持した。据え置きは2025年初めてで、直前の6月会合では市場予想を上回る50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の大幅な利下げを実施していた(2025年6月11日記事参照)。

RBIは声明で、6月の消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比2.1%と77カ月ぶりの低水準を記録したことを指摘。食品価格の下落が全体の物価を押し下げたが、コアインフレ率は4%前後で推移しており、2025年度第4四半期(2026年1~3月)以降は再び4%超に上昇する見通しとした。2025年度(2025年4月~2026年3月)通年でのCPI上昇率見通しは、前回予測の3.7%から3.1%に下方修正した。

一方、経済成長は引き続き堅調に推移しており、政府の積極的な資本支出や農村需要の回復、モンスーンの降雨の順調な進展が下支えするとみている。2025年度の実質GDP成長率見通しは、6.5%(Q1:6.5%、Q2:6.7%、Q3:6.6%、Q4:6.3%)を据え置いた。

サンジャイ・マルホトラ総裁は声明で、2025年にこれまで実施した累計100bpの利下げについて、その効果はなお信用市場や実体経済全体へ十分には行き渡っていないとの認識を示した。その上で、現時点での追加利下げは時期尚早とし、今後は波及効果の進展やインフレ・成長の動向を慎重に見極める姿勢を明らかにした。

キャピタル・スモール・ファイナンス銀行のサルブジット・シン・サムラCEO(最高経営責任者)は、「今年前半の累計100bpの利下げとインフレ率3.1%という安定的な物価見通しを踏まえた今回の据え置きは、慎重かつ先を見据えた対応だ」と評価し、「米国の関税措置など世界的な逆風が続く中でも、GDP成長率6.5%という軌道への自信を示すものであり、中長期的な経済見通しへの安心感を市場に与える」との見方を示している(「インディアン・エクスプレス」紙8月6日)。

(篠田正大)

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