ステーブルコイン発行者向けガイドラインを公表

(香港)

香港発

2025年08月18日

香港金融管理局(HKMA)は7月29日、ステーブルコイン(注)発行者のライセンス制度に関する「ステーブルコイン条例」の8月1日からの施行に当たり(2025年5月30日記事参照)、2つのガイドラインを公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。両ガイドラインは発行者に対する監督とマネーロンダリング防止のための監督要件に関するもので、準備金の監督要件、発行、償還、販売に関する手続きなどを含む。

両ガイドラインの発表に際し、HKMAは、ステーブルコイン事業は初期段階にあることから、「まず厳格かつ着実に進め、実践経験を踏まえて適度に緩和する方針」を強調した。例えば、準備金については、質の高い流動性資産による全額準備金の要件を設定したとしている。このほか、HKMAの何漢傑総裁助理は「ライセンス要件として、発行者の運営モデルが具体的かつ現実的である必要がある」と言及している。例えば、クロスボーダー決済では海外の支払い先との取引が発生するため、当該支払い先となる各国・地域の法規に準拠していることを保証する必要があるとしたほか、発行者がリソースを継続的に投入できるかどうかに加え、事業の長期的な運営可能性も要件となると説明した(「RTHK」7月29日)。

また、マネーロンダリング防止やテロ資金供与防止対策の一環として、身分証明書などを用いた本人確認を新たに義務付けることになった。

また、上述の2つのガイドラインと併せて、「ステーブルコイン発行者のライセンス制度および申請プロセスに関する説明書」と「既存発行者向け移行措置に関する説明書」も公表した。ライセンス申請を希望する事業者に対しては、8月31日までにHKMAにメールで申請の意向を表明し、HKMAから規制内容の説明や適切なフィードバックを受けることを推奨している。また、十分な準備が整って早期審査を希望する場合には、9月30日までに申請書類をHKMAに提出する必要があるとしている。

HKMAの陳維民(ダリル・チャン)副総裁は、審査は複雑で時間を要するため、最初のライセンス発行は2026年初頭となり、発行数も限られる見込みと述べた。また、連動する通貨について、1種類でも複数でも可能とし、積極的な姿勢を示しつつ、「これまでにHKMAが接触した事業者の多くは、主に香港ドルと米ドルなどの法定通貨について言及している」と明らかにした(「経済日報」紙7月30日)。

なお、当該ガイドラインは8月1日付で官報に掲載し、同日から運用している。条例の詳細やライセンス申請の手続きなどについては、HKMAのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。

(注)ステーブルコインとは、価格の安定性を保つことを目的とした暗号資産。ドルやユーロなどの法定通貨や資産(ゴールドなど)と連動することで、価格を安定させている。

〔黄莃倫(ケリー・ウォン)〕

(香港)

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