ステーブルコイン条例案が可決、HKMAの免許取得を義務化
(香港)
香港発
2025年05月30日
香港の立法会(日本の国会に相当)は5月21日、ステーブルコイン発行者のライセンス制度を確立する「ステーブルコイン条例案」を可決した。ステーブルコインとは、価格の安定性を保つことを目的とした暗号資産で、米ドルやユーロなどの法定通貨の価値に連動させている。本条例の施行により、香港でステーブルコインを発行する者、または、香港域内外で香港ドルに連動させたステーブルコインを発行する者(以下、同関係者)には香港金融管理局(HKMA)からの免許取得が義務付けられる。同関係者は、顧客資産の分別管理、強固な安定化メカニズムの維持、償還手続きなど準備資産管理や償還などの分野における要件を満たさなければならない。それらに加え、同関係者は、マネーロンダリング対策やテロ資金供与対策、リスク管理、情報の開示と監査、適合性と適切性など様々な要件を順守しなければならない。香港でステーブルコインを提供できるのはHKMAの免許を取得した機関投資家のみで、個人投資家に提供できるのはHKMAの免許を取得した機関投資家によって発行されたステーブルコインのみとなる。なお、条例の導入には移行期間が設けられ、2025年内に施行する予定。
財経事務・庫務局の許正宇(クリストファー・ホイ)局長は、本条例に関して、「『同一の活動、同一のリスクには同一の規則を適用する』の原則を堅持し、香港の暗号資産市場の持続可能な発展を促進し、利用者の権利と利益を保護し、国際金融センターとしての香港の地位を強化する」と述べた。また、許長官は、ステーブルコインの主な利用分野の1つとして「クロスボーダー決済」を挙げ、海外の金融規制当局と相互承認の制度を構築することに前向きな姿勢を示した(「経済日報」5月21日)。
香港政府は、今後も香港の暗号資産市場の発展に注力する方針だ。本条例を皮切りに、政府は暗号資産の店頭取引やカストディアンサービスに関する意見聴取を進行しつつ、同市場の発展に向けた政策方針を公表する予定。
〔黄莃倫(ケリー・ウォン)〕
(香港)
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