「アジア・エコノミック・サミット」開催、インドネシア政府は2025年8月にAIに関する規制を発表予定

(インドネシア)

ジャカルタ発

2025年07月03日

アジアのスタートアップやテクノロジー業界に特化したニュースメディア「テック・イン・アジア」は6月26日、インドネシア・ジャカルタで「アジア・エコノミック・サミット2025」(注)を開催した。イベントでは、第6代インドネシア大統領を務めたスシロ・バンバン・ユドヨノ氏が基調講演を行ったほか、インドネシアのメウティア・アフィッド通信・デジタル相、生成AI(人工知能)「ChatGPT」を展開する米国のオープンAIのロニー・チャッテルジ・チーフエコノミスト、インドネシア政府系ファンド「ダナンタラ」のパンドゥ・パトリア・シャリル最高投資責任者(CIO)らが登壇した。

メウティア通信・デジタル相は講演で、スタンフォード大学が発表した「AIインデックス2025年版」に触れ、インドネシアの回答者のうち54%が「AIは自国の経済を改善する」と考えていると紹介。この割合は中国(72%)に次ぐ高水準であり、政府としても産学官の連携のもと、AIの効果的な導入を進めていると強調した。

AI活用の優先分野として、(1)医療、(2)官僚制度改革、(3)デジタル人材の育成、(4)スマートシティ開発、(5)食料安全保障の5領域を挙げた。また、AIエコシステム構築に向けた3つの柱として、(1)法的・倫理的基盤の整備、(2)「デジタル人材育成プログラム」を通じた技術革新の担い手育成、(3)各分野のニーズに応じた技術基盤の整備を提示した。

さらに、2020年に発表した「国家AI戦略」を補完するかたちで、「AIロードマップ・ホワイトペーパー」の策定を進めており、2025年8月の完成を目指していると述べた。このホワイトペーパーは、法的拘束力を持つ規制として整備される予定であることを明らかにした。

続いて登壇したオープンAIのロニー氏は、インドネシアにおけるChatGPTのユーザー数が過去1年間で3倍に増加し、アジア太平洋地域で上位3位に入っていると紹介。特に教育、翻訳、クリエーティブ分野での活用が顕著であると述べた。今後のAI活用に向けては、「(1)クリーンエネルギーとインフラへの投資、(2)AI人材の育成、(3)各産業への積極的な導入が重要だ」とし、インドネシアが「単なる利用者」から「開発者」へと変革する必要性を強調した。

写真 メウティア通信・デジタル相の講演の様子(ジェトロ撮影)

メウティア通信・デジタル相の講演の様子(ジェトロ撮影)

(注)同サミットは、経済界や政府の代表らがAIをはじめとしたテクノロジーの進展やそれに伴う諸課題を議論する場としてテック・イン・アジアが初めて開催したもの。

(大滝泰史)

(インドネシア)

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