ニジェール政府、フランス原子力燃料大手オラノの子会社を国有化

(ニジェール、フランス、日本、中国、ロシア)

パリ発

2025年07月04日

ニジェール政府は6月19日、国営テレビを通じて、フランス原子力燃料大手オラノ(注)とニジェール政府系企業が1968年から共同出資してきたウラン採掘合弁企業ソマイールを国有化するとの決定を発表した(6月19日付「ル・フィガロ」紙ウェブ版)。これは、2023年7月の軍事クーデター(2023年7月31日記事参照)後、フランスとニジェールの関係が悪化している中、ニジェール政府とフランス企業間の紛争を激化させるものとされている。ニジェール政府は自国の主権に「公然と敵対的な」フランス政府の行動を非難している。

オラノは翌20日、この動きに対して、同社とニジェール政府が締結した合意に明白に違反し、鉱山資産の所有権を組織的に剥奪しようとしていると主張し、強い非難の意を表明した(6月20日付同社プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

オラノは、豊富なウラン資源を所有しているニジェールで3つの現地法人を通じて。ウラン鉱山の開発事業を行っていたが(2023年8月14日記事参照)、クーデター後、運営が事実上難しくなった。ニジェール政府はオラノに対して、推定埋蔵量20万トンで世界最大級とされているイムラレン鉱山の操業許可を2024年6月に取り消した。また、オラノは同年12月、ソマイールの運営支配権を喪失したことを発表した。このような中、オラノは同年12月以降、ニジェール政府に対して複数の国際仲裁手続きを開始した。

フランス政府が積極的に原子力政策を展開している中(2025年3月24日記事参照)、かつてフランスにとって重要なウラン調達先の1つだったニジェールへの依存度は低下している。2000年以降、フランスはウラン調達先の多様化政策を実施し、ニジェールのほか、カザフスタン、ウズベキスタン、ナミビア、オーストラリアなどからも調達している(2023年8月14日記事参照)。

オラノは同国でのウランの生産と同国からの輸出も中止したが、在庫としてウラン精鉱の積み荷(約1,400トン、市場価格では2億5,000万ユーロ以上)が残っている。ニジェールの軍事政権はこの積み荷を中国の中国核工業集団(CNNC)、もしくはロシアの国営原子力企業ロスアトムへ売却する方向で、当該企業関係者との調整を活発に行っていると報道されている(5月26日付「ル・モンド」紙ウェブ版)。

(注)オラノのプレス資料外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、フランス政府が90.33%、日本原燃と三菱重工業がそれぞれ4.83%を出資している。

(ピエリック・グルニエ)

(ニジェール、フランス、日本、中国、ロシア)

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