ジェトロ、東北地域のクラフト製品の海外展開をウェビナー通じて支援
(日本、世界)
山形発
2025年07月04日
ジェトロは6月26日、手作業や伝統的な技術を用いて作られた製品、いわゆるクラフト製品の海外展開を後押しするため、「東北クラフトの海外における可能性について」をテーマとしたウェビナーを開催した。日本のクラフト製品の海外展開に詳しい専門家による講演に加え、東北地域で海外展開に取り組んでいる事業者の実体験を基にしたトークセッションや、ジェトロの支援プログラムの紹介(注1)を行い、東北域内のクラフト事業者や支援機関など約50人が参加した。
第1部では、日本全国のさまざまなライフスタイルブランドのプロデュースやブランディング支援を手掛けてきたシンクシンクの川又俊明氏(注2)が、世界各地域のバイヤーが重視するポイントや市場の特徴を紹介した。売れるということは「共感を得ること」で、独りよがりのまま単に売れる商品を目指すのではなく、作り手の技術や思いをいかにターゲットにわかりやすく伝えるかが重要だという視点を提起した。その上で、ターゲットに響くプレゼン方法や、生活スタイルに合わせたカスタマイズ(色やサイズの調整、食洗器対応への変更など)の必要性、ブランド構築とは「どう見られたいか」を明確にすることを強調した。
第2部のトークセッションでは、宮城県の東北工芸製作所(注3)常務取締役の佐浦みどり氏と、山形県の鏡畳店
(注4)代表取締役の鏡芳昭氏が登壇し、これまでの海外展開の取り組みや課題を指摘した。現地の生活様式に合わせて商品をカスタマイズした結果、現地ニーズに即した新製品の開発と自社の技術革新につながった事例や、海外バイヤーとのコミュニケーションや製品発送時の現地の物流事情への対応などの課題をどう乗り越えてきたかといった実際の体験談を紹介した。
参加者からは「同じ東北の事業者が海外で得た生の声を基に、試行錯誤を繰り返しながら海外展開を進めている様子を具体的に知ることができた」「実際に現地に行き、生活スタイルの違いを実感して得られる気づきの重要性がわかった」「海外のお客さんから届く、従来の製造方法を見直す必要が出てくるような要望・難題に柔軟に対応することで、さらなるビジネスチャンスにつながる事例が参考になった」といった声が寄せられた。
(注1)ジェトロから「TOHOKU CRAFT JOURNEY」プログラムの概要を紹介した。このプログラムでは、北欧、欧州のクラフト製品のバイヤーと連携したマーケティング支援を行い、海外展開に向けた実践的なサポートを提供する予定。現在、参加企業を募集中(申込期限7月10日)。
(注2)ジェトロの海外展開支援プログラム「TAKUMI NEXT」で2023年度までメンターを務めた。
(注3)伝統的工芸品「玉虫塗」の技法を生かした商品開発と製造を行う会社。
(注4)国産イグサにこだわり、現代の生活に合った畳製品の開発や内装を手掛ける会社。
(柴田桃佳、倉谷咲輝)
(日本、世界)
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