対米交渉で非関税障壁削減を提案、迂回輸出防止策も即日実施

(マレーシア、米国)

クアラルンプール発

2025年05月07日

マレーシアのアンワル・イブラヒム首相兼財務相は、5月5日に招集した臨時国会で、相互関税を巡る米国との交渉方針につき、米国製品購入や非関税障壁の削減に取り組む一方、マレーシアの主要国策で譲歩することはないと強調した(首相スピーチ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、マレー語のみ)。引き続き他のASEAN諸国とも協力しながら、秩序立った交渉を継続する考えを示した。

アンワル首相は、米政府がマレーシアと関税交渉に合意していると指摘し、交渉が順調に進めば、相互関税が引き下げられる可能性もあると説明。マレーシアが米国からの輸入品に47%の関税を課しているとの米国の主張に対しては、事実ではないとあらためて否定し、課税率は平均5.6%にとどまると強調した。

ザフルル・アジズ投資貿易産業相らが4月に米国で2国間協議に臨んだ際、非関税障壁への対応を含む4つの事項を米国側に提示していた(2025年4月30日記事参照)。これをさらに具体化し、現段階では、ボーイング製旅客機の調達を含む戦略的な米国製品購入、半導体に関する知的財産権保護の強化といった投資環境整備、農業・金融・デジタル分野など主要分野での貿易投資手続き円滑化、を提案する考え。一方、(マレー系や先住民族を優遇する)ブミプトラ政策や国内事業者を優先する調達政策、戦略的分野における産業保護といった、主要な国策での譲歩を否定した。また、関税の影響を緩和するため、国内中小企業に対する支援策も積極的に講じていく姿勢も示した。

マレーシア経済についてアンワル首相は、2025年の予測成長率4.5~5.5%(2025年3月26日記事参照)を達成できない恐れがあると指摘した。財務省と中央銀行が相互関税の影響を分析中で、米政府との交渉結果が出た後に見通しを見直す可能性があると説明した。

非特恵原産地証明をMITIに集約、迂回輸出への管理強化

投資貿易産業省(MITI)は同日、米国向けの輸出における非特恵原産地証明書(NPCO)につき、翌5月6日以降は同省を唯一の発行機関とすると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これにより、MITIがこれまで発給機関として指定していたマレーシア製造業者連盟(FMM)など業界団体や商工会議所でのNPCO発行を、米国向けに限り即時停止する。

MITIは、政府が国際貿易慣行の健全性維持に取り組んでいることの証左として、物品の原産地に関する虚偽申告や、これによる関税回避を断固認めない考えをあらためて表明した。背景には、中国製品の米国向け迂回輸出を防止する狙いがある。MITIは先述の2国間協議においても、貿易管理を徹底する旨を米国側に伝達していた。

(吾郷伊都子)

(マレーシア、米国)

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