石破首相とEU首脳らが会談、「日EU競争力アライアンス」立ち上げ
(日本、EU)
調査部欧州課
2025年07月29日
石破茂首相と欧州理事会(EU首脳会議)のアントニオ・コスタ常任議長、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は7月23日、東京で第30回日・EU定期首脳協議を行った。経済安全保障や防衛産業、脱炭素、循環型経済、エネルギーなど幅広い分野の協力、自由で公正な経済秩序の維持・強化などに日本とEUがともに取り組むことで一致した。共同声明(和文仮訳、英文
)の主な内容は次のとおり。
〇戦略的パートナーシップ強化
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日本とEUは価値と原則を固く共有している。日EU戦略的パートナーシップ協定(SPA)
、日EU経済連携協定(EPA)を基盤に、パートナーシップを強化していく。
〇安全保障・防衛協力
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日EU安全保障・防衛パートナーシップ
を基に、サイバーセキュリティー、ハイブリッド脅威、海洋安全保障、宇宙安全保障、軍縮・不拡散、女性・平和・安全保障(WPS)などの分野で協力を強化する。
- 防衛産業基盤の強化のため、日EU防衛産業対話の立ち上げに向けて協力する。
〇経済安全保障
- WTOを中核とする多角的貿易体制の堅持を含め、安定的で予測可能なルールに基づく自由で公正な経済秩序の維持と強化にともに取り組む。
- 重要鉱物を含むサプライチェーンの強靱(きょうじん)化・多角化や、戦略的依存の低減に関して協力し、経済的威圧や非市場的政策・慣行に対処する。重要・新興技術の促進・保護、エネルギー分野の協力を推進する。
- 日EUの競争力強化と成長のため、「日EU競争力アライアンス」の立ち上げで一致。
このほかにも、気候変動・環境問題に関して、パリ協定などの多国間環境協定を支持することや、国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)の成功にコミットすることで一致した。
今回立ち上げに合意した「日EU競争力アライアンス」について、フォン・デア・ライエン委員長は、(1)欧州と日本の貿易拡大、(2)経済安全保障の強化に加え、(3)イノベーション、グリーン、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する協働の3つの柱に基づくと説明した。(1)に関しては、日本とEUの企業の負担軽減のため、産業界の現実的な視点を集約し、よりよい規制や簡素化に関する意見交換を深化させることで合意した。(3)については、研究やイノベーションで、ジェトロ、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と、欧州イノベーション会議(EIC、2024年10月18日記事参照)、欧州イノベーション・技術研究所(EIT)がスタートアップのビジネス拡大や国際共同研究コンソーシアム形成に関して協力することで合意した。
(近藤慶太郎、川嶋康子)
(日本、EU)
ビジネス短信 c6a23e9e0df7f155