タイ銀行が政策金利1.75%に据え置き、エコノミストは今後の利下げを予想
(タイ)
バンコク発
2025年07月02日
タイ中央銀行(BOT)は6月25日、金融政策委員会(MPC)を開催し、6対1の賛成多数で、政策金利を現行の1.75%で据え置くことを発表した。
前回の利下げ(2025年5月7日記事参照)から今回据え置きとなった背景として、BOTは予想を上回る経済の伸びを指摘。特に電子機器の輸出や米国向けの前倒し輸出が製造業と関連サービスを下支えした。他方、2025年後半は、米国の関税措置や所得および消費者信頼感の低下により、輸出と個人消費の減速が予想される。
MPCは、これまでの利下げが一定のリスク緩和をもたらしたと評価する一方、不確実性の高まりや限られた政策余地を踏まえ、金融政策を実施するタイミングと効果が重要として、据え置きを決定した。一方、委員の1人は、金利負担の軽減や景気減速の影響を受ける層への支援を目的に、0.25ポイントの利下げを主張した。
経済成長率について、BOTは2025年に2.3%、2026年に1.7%の成長を予測。観光客数の見通しは下方修正されたが、1人当たり消費額の増加により観光収入は拡大が続くと予測する。また、特定の産業においては、輸入製品の流入や消費者の行動変化に伴う競争の激化に直面しているとの見方を示した。インフレ率は2025年に0.5%、2026年に0.8%となり、低水準にとどまる見通しだが、地政学的リスクによるエネルギー価格上昇には警戒感を示した。
ロイター(6月23日付)が取材したエコノミストの6割が今回の据え置きを事前に予期し、エコノミスト24人中17人は9月末までにBOTが政策金利を1.5%まで引き下げると予想している。サイアム商業銀行(SCB)経済研究センターのシニアエコノミストのプーニャワット・スリーシング氏は、「実質金利は過去10〜20年の平均(マイナス0.1%)より高水準の1%にあり、利下げ余地が十分にある」との見解を示した(6月24日付「スタンダード」紙)。
2025年中にMPCは残り3回の開催が予定されており、8月13日、10月8日、12月17日に開催されるスケジュールとなっている。
(藪恭兵)
(タイ)
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