トランプ米大統領、8カ国への相互関税の新税率通告、ブラジルに50%など

(米国、フィリピン、ブルネイ、モルドバ、アルジェリア、イラク、リビア、スリランカ、ブラジル)

ニューヨーク発

2025年07月10日

米国のドナルド・トランプ大統領は7月9日、フィリピン、スリランカ、ブラジルなど8カ国からの輸入に対し、8月1日から適用する追加関税率を記載した各国宛ての書簡をSNSへの投稿を通じて公開した。

トランプ氏は7日に、相互関税の適用停止期限を7月8日から8月1日に延期する大統領令を発令したほか、日本や韓国など14カ国に対する書簡を公開した(2025年7月8日記事参照)。8日にもSNS投稿を通じて、近日中に複数の国に書簡を送付する意向を明らかにしていた。その際、相互関税の適用停止期限の8月1日をさらに延期するつもりはないとも表明した。

新規に書簡が公表された8カ国と新旧の税率は次のとおり。

  • フィリピン:2025年4月に発表した相互関税の税率17%から20%に引き上げ
  • スリランカ:44%から30%に引き下げ
  • ブルネイ:24%から25%に引き上げ
  • モルドバ:31%から25%に引き下げ
  • アルジェリア:30%で増減なし
  • イラク:39%から30%に引き下げ
  • リビア:31%から30%に引き下げ
  • ブラジル:2025年4月に相互関税は設定なし、今回新たに50%を設定

4月に相互関税が設定された57カ国・地域のうち、これまでに21カ国に対する新税率が公表されている。ただし、相互関税の適用停止期限を8月12日に設定した中国(2025年6月13日記事参照)や、合意が成立したとされるベトナム(2025年7月3日記事参照)を除き、残る34カ国・地域に対する新税率は明らかではない。

今回50%の追加関税を新規に設定したブラジルに関して、トランプ氏は7月7日と8日に、ブラジル司法当局がジャイール・ボルソナーロ前大統領を起訴したことを「魔女狩り」と批判するSNS投稿を行った。

ブラジルに対する書簡では、他国に対する書簡と同様に、両国間の不公正な貿易関係を指摘した。ただし、米国商務省によると、2024年の米国とブラジル2国間の財貿易収支は、米国の68億ドルの黒字だった。書簡では、他国に対する書簡と異なり、ボルソナーロ氏に対する起訴や、ブラジル最高裁による米国のSNSプラットフォームに対する裁定結果なども追加関税の理由に挙げた。さらに、ブラジルが米国企業のデジタル事業に対する攻撃を継続しているほか、その他の不公正な貿易慣行が存在するとして、トランプ氏が米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表に対して、1974年通商法301条に基づく調査の開始を指示したことも明らかにした。

1974年通商法301条は、外国の通商措置や政策、慣行が通商協定に規定した米国の権利を侵害する場合や、不合理または差別的で米国の商業に負担や制限を与える場合に、外国の製品に対して追加関税など輸入制限措置を講じることや、外国のサービスに対して追加料金や制限を課す権限などを認めている。米国が中国原産品の輸入に課す7.5~100%の追加関税も301条に基づく(2024年6月18日付地域・分析レポート参照)。

(葛西泰介)

(米国、フィリピン、ブルネイ、モルドバ、アルジェリア、イラク、リビア、スリランカ、ブラジル)

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