大阪・関西万博を契機にグレーター・マンチェスター市長が来阪、姉妹都市提携の協議開始で合意

(日本、英国)

大阪本部海外ビジネス推進課

2025年07月01日

英国イングランド北西部の都市カウンティー(地方行政単位)のグレーター・マンチェスター(GM)と大阪市は6月18日、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)を契機にアンディ・バーナムGM市長を団長とするミッション団が訪日したことに伴い、両市のより一層の交流・連携の促進を図るセミナーを開催した。

GMは18世紀後半から19世紀にかけて起こった産業革命の中心地で、大阪市はGMから多くの技術を学び、「東洋のマンチェスター」と呼ばれる都市に作り上げた長い歴史関係を有する。GMと大阪市は2023年12月に友好協力関係構築に関する覚書を締結(2023年12月20日記事参照)しているが、今回のGMミッション団の来阪では、姉妹都市提携の締結に向けて協議を開始する友好宣言を行った。

バーナムGM市長は基調講演の冒頭、今回合意した友好宣言について、過去200年にわたる交流の歴史を繰り返すもので、素晴らしいと評した。GMは歴史の教科書によって煙突と煙が満ちたイメージを持たれているが、現在は人工知能(AI)やライフサイエンスなどの分野で英国を代表するイノベーション創出拠点になっていると指摘した。また、2038年にネットゼロ都市の達成を目指し、世界中から最高レベルの英知を集めており、パナソニックが環境分野の新技術の実証実験に取り組んでいると紹介し、GMには新技術を試験実証する基盤があるため、大阪企業にもぜひ活用してほしいと呼びかけた。

写真 スピーチをするバーナム市長(ジェトロ撮影)

スピーチをするバーナム市長(ジェトロ撮影)

マンチェスター投資促進機構(MIDAS)ビジネス開発ディレクターのデービッド・ヒルトン氏はGMの経済概況と優位性を持つ産業について説明した。「GMの人口は290万人、経済規模はロンドンに次ぐ大きさで、英国内で高い成長を見せている都市の1つだ。数多くの外国企業を受け入れており、ブラザー、ミツカン、関西電力といった日本企業が拠点を設置している。GMが強みを持つ分野として、デジタルクリエーティブ、サイバーセキュリティー、AI、Eコマース、テキスタイルファッション、航空、先端素材、フィンテック、グリーンテックなどの分野がある」とし、今後も大阪と連携して未来を共創したいと語った。

大阪市の岡本圭司経済戦略局長は、両市は2023年12月に脱炭素分野や経済交流、大学間連携に向けた友好協力関係構築に関する覚書を締結したが、これが今や観光やビジネス分野にも広がっていると指摘した。大阪商工会議所国際ビジネス委員長の森島弘光氏(丸紅執行役員大阪支社長)は幕末・明治維新の争乱で荒廃した大阪を救ったのはマンチェスターだったという歴史的経緯について触れ、マンチェスターは先端技術で世界をリードする、大阪にとってよきビジネスパートナーと強調した。

ミドリムシ培養と水耕栽培技術を活用してバイオ燃料開発を行うスタートアップREVO Energyの中谷敏也代表取締役はGMを含めた欧州への進出を目指す動機について、英国をはじめとする欧州地域はバイオ分野で最先端の知見を有すること、ネットゼロカーボンの達成に向けて新技術の導入と規制・ルール変更に前向きなことや、意欲的な目標を達成しようという高い志を持った協力者がいることを挙げ、大阪市とGMの産学連携基盤は進出を目指す決め手となったと述べた。

写真 パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

(齋藤寛)

(日本、英国)

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