中国の空飛ぶクルマメーカー、海外から大口受注が相次ぐ
(中国、タイ、アラブ首長国連邦)
上海発
2025年07月31日
電動垂直離着陸機(eVTOL)メーカーの上海沃蘭特航空技術(VOLANT)は7月23日、中国・上海市で開催された2025国際低空経済博覧会(注)で、タイ大手複合企業のパン・パシフィック(Pan Pacific)、工事請負業者の中国航空技術国際工程と3社で提携契約を結んだと発表した。パン・パシフィックはVOLANTが開発したeVTOL「VE25-100」500機を購入し、タイ、モルディブなどで、島の間や、島内の短距離輸送サービスおよび救急支援などに用いられる見通しだ。購入総額は17億5,000万ドルで、中国企業が海外から獲得する人員輸送eVTOLとして最大規模の受注だという。両社が「一帯一路」沿線の国・地域でサービスを提供する際に、中国航空技術国際工程は低空に関連するインフラを整備する役割を担う。
VOLANTが中国eVTOL業界のリーディングカンパニーとして開発したeVTOL「VE25-100」は、プロペラと固定翼を組み合わせた複合翼型の設計を採用する。離陸重量は2.5トンと大型のため、操縦士1人と乗客5人を乗せることができる。巡航時速は235キロ、航続距離は200~400キロに達し、都市間の通勤、観光、救急支援、貨物輸送などでの利用が想定されている。2025年4月に商業活動の認証を受けるための必要基準(G-1)が認定され、eVTOLの本格的な運航実現に向けて大きく前進している。
同じくeVTOL開発を手掛ける上海時的科技は7月16日、アラブ首長国連邦(UAE)企業のオートクラフト(Autocraft)から10億ドルで受注したと発表した。オートクラフトは、同社が開発したeVTOL「E20」350機を購入し、中東・北アフリカ地域での低空観光、都市間移動を進める予定だ。
中国eVTOLメーカーはこれまでに中国国内からの受注が多かったが(2025年4月23日記事参照)、eVTOLは観光、都市の交通渋滞の緩和などで利用される新たな空の移動手段として期待されており、海外からの受注も急速に増えている。
(注)2025国際低空経済博覧会は7月23~26日に国家会展中心(上海)で開催。展示面積は約6万平方メートル、出展企業は約300社に達したほか、フォーラムやシンポジウムも約30回行った。
(劉元森)
(中国、タイ、アラブ首長国連邦)
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