USMCA発効から5年で域内貿易が拡大、メキシコ研究機関発表

(メキシコ、米国、カナダ)

調査部米州課

2025年07月14日

メキシコ競争力研究所(IMCO)は7月8日、発効から7月1日で5年が経過した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)による域内貿易への影響をまとめたレポートを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

「USMCAの5年間、われわれの現在地は」と題した同レポートでは、協定が発効する直前の2019年と2024年の域内貿易額を比較し、同期間にメキシコの対米国輸出が38%、対カナダでは32%増加したことを紹介した。米国からメキシコ、カナダへの輸出はそれぞれ30%、19%増加し、カナダから米国、メキシコへの輸出もそれぞれ29%、31%増加していた。域内での貿易がUSMCA発効前後で拡大しており、とりわけメキシコからの輸出が大きく増加した結果となった。

同レポートでは、2026年7月までに予定されているUSMCAの共同見直しで予想される論点も紹介した。取り上げた主な論点は次のとおり。

  • 自動車産業の原産地規則の厳格化
  • 「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」など、労働関連規制の強化
  • メキシコによるグリホサート(除草剤)の輸入禁止(2025年2月7日記事参照)、カナダによる乳製品への関税割当(2023年11月29日記事参照)など、農業分野での輸入規制の緩和
  • 中国企業による域内への投資に対する規制設置

IMCOは共同見直しに向けての提言も盛り込んでおり、港湾設備の拡大を通した物流インフラの強化や米国への輸送ルートの安全性向上に向けた取り組みなど、メキシコとの貿易で障壁となっている課題を指摘した。

足元では、メキシコ中央銀行の貿易統計によると、2025年1~5月のメキシコから米国とカナダへの輸出額は前年比でそれぞれ3%、10%増加している。背景には、多くの製品がUSMCA原産品ならば米国の追加関税の対象外となっていること(2025年4月3日記事参照)などが考えられる。一方で、USMCA共同見直しの行方や、7月12日にはドナルド・トランプ米大統領がメキシコに対する30%の追加関税を発表する(2025年7月14日記事参照)など、先が見通せない状況は続いている。

(加藤遥平)

(メキシコ、米国、カナダ)

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