米シカゴ連銀経済報告、5月後半~6月の経済活動はわずかに増加

(米国)

シカゴ発

2025年07月23日

米国連邦準備制度理事会(FRB)が7月16日に公表した地区連銀経済報告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(ベージュブック、注1)の中で、米国中西部の一部地域(注2)を管轄するシカゴ連銀は、5月後半から6月までにかけての同地域の経済活動について、わずかに(slightly)増加したと報告した。関係者は、今後1年間は経済活動のわずかな減少を予想している。

同地域の経済活動を分野ごとにみると、雇用は控えめに(modestly)増加した。関係者は今後1年間も同様のペースで雇用増加が続くと見込んでいる。製造業の関係者は、引き続き熟練労働者の確保の難しさを報告した。一方、人材派遣会社の関係者は、製造業からのサービス需要がわずかに増加したと指摘した。

個人消費は、報告期間を通して横ばいとなった(flat)。自動車を除く小売売上高はわずかに増加したが、関税賦課による価格の引き上げへの懸念から、今回の報告期間以前に支出が前倒しされた一部のカテゴリーでは販売が減少、家電製品やコンピュータへの支出は鈍化した。新車販売は著しく減少した。自動車販売店は、最近の売り上げ減少が春先の関税前の駆け込み需要による増加をほぼ相殺したと指摘した。

企業支出は変化がなかった(unchanged)。資本支出は横ばいで、今後1年間の支出に大きな変化はないとみられる。複数の関係者は、経済の不確実性によって資本支出を中止したと報告した。新車と中古車の在庫は、関税引き上げ前の販売急増と最近の生産減少により著しく減少したため、自動車価格の上昇への圧力が高まった。

製造業の需要はわずかに減少した。化学品とプラスチックの受注がわずかに減少、鉄鋼生産はわずかに増加した。自動車の生産は減少し、一部の自動車メーカーは重希土類(注3)のサプライチェーンの混乱(2025年6月5日記事参照)を報告した。

2025年の地区内での農業所得の見通しは、報告期間中ほとんど変化はなかった。畜産業の収入見通しの改善が、耕種部門の見通しの悪化を相殺した。複数の関係者は、散布などの農業サービスのコストの上昇により、肥料と農薬の使用量を減らす見込みだと報告した。トウモロコシと大豆の価格は下落し、豚、牛、乳製品の価格は上昇した。卵の価格は再び下落した。

個々の調査対象項目ごとの詳細は添付資料表参照。

(注1)連邦公開市場委員会(FOMC)の開催に先立ち、年8回公表されており、銀行からの報告やビジネス関係者などの声を基にまとめたもの。

(注2)アイオワ州、イリノイ州北部、インディアナ州北部、ウィスコンシン州南部、ミシガン州南部。

(注3)レアアース(希土類)の中でも原子量が大きいものが重希土類と呼ばれ、電動自動車(EV)やハードディスクなどに使われるモーター、ガラス基板などの研磨剤や自動車用排ガス触媒などに使用される。

(星野香織)

(米国)

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