アフリカビジネス協議会、TICAD9へ向け民間セクターから提言
(日本、アフリカ)
調査部中東アフリカ課
2025年07月08日
アフリカビジネス協議会(JBCA、注1)は7月1日、第3回本会議を開催した。武藤容治経済産業相、藤井比早之外務副大臣、日本経済団体連合会からアフリカ地域委員会委員長の大橋徹二氏と加留部淳氏、経済同友会から岩井睦雄筆頭副代表幹事、ジェトロの石黒憲彦理事長が共同議長として出席した。会議にはJBCA会員をはじめとした日本企業も参加し、2025年8月に横浜で開催される第9回アフリカ開発会議(TICAD9)へ向け、民間セクターから政府への提言も示された。
藤井外務副大臣は開会あいさつで、「TICAD9では、民間セクター主導の持続的なアフリカとのつながりを進展させたい」とし、人工知能(AI)、デジタル、医療、再生可能エネルギーなどで、技術をアフリカと共に創り上げていくことが必要とした。
また、ジェトロの石黒理事長は、2019年のJBCA発足から会員数は521社(831人)までに成長し、オンラインでの会員間の交流など活用が拡大していると述べた。TICAD9でジェトロが開催する「TICAD Business Expo and Conference(注2)」には、過去最大となる195社、アフリカ40カ国が出展予定であり、イノベーション、宇宙、アニメ、ポップカルチャーなど多様な取り組みを示すとともに、アフリカ各国とJBCAの対話の場を設けたいとした。
経済界からは、大橋徹二・日本経済団体連合会アフリカ地域委員会委員長が、経済に加え外交上でのアフリカの重要度が高まっているとして、TICAD9へ向け4つのインフラ(1.道路・電力などのハード、2.FTA/EPAなどのソフト、3.教育・人材育成などのヒューマンリソース、4.食糧・雇用などのヒューマンセキュリティー)を指針として推し進めることを提言し、経済界の取り組みへの政策面からの支援を要請した。
岩井睦雄・経済同友会筆頭副代表幹事は、地球規模の社会課題解決の停滞が危惧される中、グローバルサウスが抱える課題に関与することは世界で信頼されるパートナーとして必須であり、アフリカとの共創を図っていくべきと述べた。また、2023年に経済同友会の有志が創立したアフリカ向けインパクト・ファンド「&Capital」に言及し、2025年後半には資金運用を実現する運びとした。
加留部淳・日本経済団体連合会アフリカ地域委員会委員長は、「TICAD9は、アフリカが日本に何を求め、日本がどう応えられるかを確認する場である」と述べ、政府の「アフリカ経済戦略会議」の議長を内閣官房副長官から首相にするなどの提言を紹介し、アフリカにおける政府の役割強化を望むとした。
これに対し、武藤経済産業相は、TICAD9へ向けたアフリカとの関係強化の取り組みとして、日アフリカ官民経済フォーラム(2024年12月19日記事参照)で発足した「日アフリカ産業共創イニシアチブ(JACCI)」を紹介した。TICADでは、第三国、官民、日本貿易保険(NEXI)や国際関係機関などとの連携を生かし、アフリカの抱える課題の解決策の共創とともに、アフリカの首脳、閣僚に十分にアピールする機会をつくっていくと述べた。
なお、会議後に設けられたネットワークイベントには約60社が参加し、官民を超えた交流が行われた。
左から石黒ジェトロ理事長、岩井氏、藤井外務副大臣、武藤経済産業相、大橋氏、加留部氏(ジェトロ撮影)
(注1)アフリカビジネス協議会は、TICAD7官民円卓会議第3回会合(2019年3月18日)において採択された「TICAD7官民円卓会議 民間からの提言書」を受けて立ち上げられた会議体。日・アフリカ間の貿易・投資およびビジネス関係の促進を目的に、日本企業、国内関係省庁、政府関係機関による日・アフリカ官民連携に関する政策対話を行う。
(注2)「TICAD Business Expo and Conference」への一般参加者の募集は6月30日に開始されている(2025年6月30日付プレスリリース参照)。
(吉川菜穂)
(日本、アフリカ)
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