米トランプ政権、ポリシリコンと無人航空機システムに対する232条調査を開始、パブコメ募集

(米国、日本)

ニューヨーク発

2025年07月16日

米国商務省産業安全保障局(BIS)は7月1日、ポリシリコンおよび無人航空機システム(UAS)の輸入に関する1962年通商拡大法232条に基づく調査を開始した。7月16日に公示予定の官報案(ポリシリコン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますUAS外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で明らかにした。BISは官報公示後21日間、調査に関するパブリックコメントを受け付ける(注1)

232条は、商務省の調査の結果、特定製品の輸入が米国の国家安全保障に脅威を及ぼすと判断された場合に、大統領に追加関税などの輸入制限措置を発動する権限を認めている(注2)。トランプ政権は232条に基づき、鉄鋼・アルミニウムに50%(2025年6月4日記事参照)、自動車・同部品に25%の追加関税を課している(2025年4月3日記事参照)。また、ドナルド・トランプ大統領は232条に基づき、8月から銅に50%の追加関税を課す意向を表明している(2025年7月11日記事参照)。トランプ政権は今回発表分を含めて8分野で232条調査を進めている(注3)。

官報案によれば、調査対象品目はポリシリコン・同派生品、UAS・同部品。調査対象品目の関税分類番号(HTSコード)は示されていない。米国国際貿易委員会(USITC)の貿易統計によると、ポリシリコンを含むシリコン(HTSコード2804.61~69)の米国輸入額(2024年、通関ベース)は5億7,000万ドルで、ブラジル(1億9,000万ドル)とカナダ(1億1,000万ドル)の2カ国が全体の約54%を占める。無人航空機(UAV、HTSコード8806.21~29)の米国輸入額は4億2,000万ドルで、マレーシア(2億4,000万ドル)が全体の約5 8%を占め、中国(8,000万ドル)が約19%と続く(添付資料表参照)。

なお、ポリシリコンはシリコン系太陽電池の原材料の1つであることから、ポリシリコンの派生品として、太陽電池に対し、追加関税などの輸入制限措置が講じられる可能性もある。米国は、特に中国や東南アジア製の太陽電池に対して、緊急輸入制限(セーフガード)、アンチダンピング関税(AD)、補助金相殺関税(CVD)、1974年通商法301条に基づく対中追加関税、ウイグル強制労働防止法(UFLPA)などに基づく輸入制限措置をこれまでに重層的に講じている。ドローンなどUASについても、中国が競争優位性を有することが米国の国家安全保障上のリスクにつながるとの懸念がこれまでに議会で提起されてきた(2024年6月28日記事参照)。米国税関・国境警備局(CBP)によると、UFLPAに基づく措置は外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、直近1年間ではドローンなどUASを含む、中国とマレーシアの自動車・航空宇宙分野の物品に重点的に執行されている。

(注1)コメントは連邦政府ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから提出可能。案件番号はポリシリコンがBIS-2025-0028、UASがBIS-2025-0059。

(注2)232条に基づく調査や発動の手続きの詳細は、2024年12月10日付地域・分析レポート参照

(注3)木材、半導体、医薬品、重要鉱物、トラック、民間航空機、ポリシリコン、UAS。232条調査の案件の詳細は、2025年6月24日付地域・分析レポート参照

(葛西泰介)

(米国、日本)

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