ジェトロ、サウジアラビアのファッション産業の最新動向に関するウェビナー開催
(日本、サウジアラビア)
福井発
2025年07月23日
ジェトロは7月16日、「サウジアラビアの経済概況とファッション産業の最新動向」をテーマとしたウェビナーを開催した。全国の繊維産業企業や自治体などから約50人が参加し、講師としてジェトロ・リヤド事務所の現地駐在員が登壇した。
第1部では「サウジアラビアの経済概況」と題し、政治・経済の概況や貿易動向、国家戦略について、林憲忠所員が解説した。同国政府が2016年に発表した国家改革戦略「ビジョン2030」を取り上げ、石油産業依存からの脱却や、経済の多角化を急速に進めている点について説明した。中でも成長戦略の柱である投資の促進を目的に、イノベーション支援や地域統括会社(RHQ)の誘致など多様な政策・手段を投入している事例を紹介し、現地のビジネス環境は近年少しずつ改善されつつあると述べた。
第2部では、「『ビジョン2030』におけるサウジアラビア・ファッション産業」をテーマに、井村文哉所員が講演した。特に「ビジョン2030」の発表以降、服装の規制解除や女性の社会進出、映画館などエンターテインメント施設の営業解禁が進み、消費者の嗜好(しこう)や生活に大きな変化が生じている現状について触れた。中でもファッション分野については、街中で白や黒の民族衣装を着用している人が多数を占める中、アレンジを加えた民族衣装やTシャツなど現代的な衣服を着用して外出する人が少しずつ増えている現状について紹介した(2025年5月20日付地域・分析レポート参照)。また、現代ファッションが浸透しつつある30歳未満の若年層が約6割を占める人口構造や、観光客の増加によって消費が拡大し、強い需要がある一方、生地の調達元やデザイナー、地場・国際ブランドの不足により供給力に大きく課題があり、日本企業の新規進出市場としてのポテンシャルを有していると強調した。終盤には、政府が創設したサウジアラビア・ファッション委員会(注)による現地ブランド育成や支援の取り組み、ジェトロが2025年2月に主催した「サウジアラビア展示商談会・ワークショップ(繊維・テキスタイル)」(2025年2月27日記事参照)の開催結果についても言及した。
ウェビナーの様子(ジェトロ撮影)
(注)サウジアラビア文化省がファッション分野の産業振興のために創設した組織。同国の国家改革戦略「ビジョン2030」に沿って、ファッション産業に携わる現地の人々を支援し、ファッション分野を発展させることを目指している。
(野崎太輔、棟田涼介)
(日本、サウジアラビア)
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