大統領候補ハラ氏、共産党からの離党を否定

(チリ)

調査部米州課

2025年07月08日

「MEGANOTICIAS」などのチリ現地メディアは7月6日、チリ共産党に所属するジャネット・ハラ氏が同党から離党する可能性を否定した、と相次いで報道した。ハラ氏は、6月29日に与党連合が実施した大統領選挙予備選挙に勝利(2025年6月30日記事参照)した後、一部の関係者がその離党(注1)を示唆したことで注目を集めていた。7日6日に開催されたチリ共産党の結党113周年記念式典(注2)に参加したハラ氏は、その合間に行われたメディアによるインタビューの中で自身の去就について問われ、「(現時点で共産党からの離党については)検討していない(Ese tema no está sobre la mesa)」とコメントしている。

決選投票までを見越した戦況は、右派がやや優勢か

予備選挙の終了後、アクティバ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますカデム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどの民間調査会社は、大統領選挙(2025年11月の予定)に関する最新の世論調査結果を公表しているが、そのいずれにおいても、過去の調査と比べてハラ氏が大きく支持率を伸ばしている(添付資料表1、2参照)。予備選挙でハラ氏に敗れたカロリナ・トア氏やゴンサロ・ウィンター氏の支持層を順当に取り込み、左派の一大勢力としての基盤が確立された様子がうかがえる。

クリテリア外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも同様の調査結果を公表しており、先述した2社と同様に支持率トップはハラ氏(31%)で、右派の候補者であるホセ・アントニオ・カスト氏(22%)とエブリン・マテイ氏(18%)がそれに続く。一方で、ハラ氏とカスト氏、あるいはハラ氏とマテイ氏という組み合わせで大統領選挙の決選投票(注3)が行われる場合にはいずれに投票するかという質問では、カスト氏、マテイ氏の支持率がそれぞれハラ氏を上回った(添付資料図1、2参照)。ただし、現時点では無効票や白票を投じるという回答割合が全体の2割程度を占めている。チリは、2024年10月以降の選挙で義務投票制(注4)を再導入しており(2024年11月1日記事参照)、今後は各陣営がこういった浮動票をいかに取り込めるのかが極めて重要となる。

(注1)所属する単一の政党に縛られず、あくまでも左派連合の統一候補者であるという印象を強める狙いがあるとみられる。

(注2)チリ共産党の発足は1922年だが、その前身となる政党が結党された1912年から起算して113年となる。

(注3)大統領選挙の第1ラウンドでいずれかの候補者が過半数の票を獲得した場合には、得票上位2人による決選投票は行われずに、大統領が決定される。

(注4)有権者が合理的な理由なく投票を行わない場合、罰金が科される。予備選挙は対象外。

(佐藤竣平)

(チリ)

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