中・東欧諸国の経済、個人消費が成長を下支え
(中・東欧、西バルカン、欧州、ウクライナ、ロシア、米国)
ウィーン発
2025年07月14日
ウィーン比較経済研究所(WIIW)は7月1日、中・東欧と西バルカン諸国の夏季経済予測を発表した。中・東欧のEU加盟11カ国のGDP成長率は、2025年に2.3%(前回より0.2ポイント減、2025年5月8日記事参照)、2026年には前回予測と変わらず2.8%と、ユーロ圏20カ国の成長率(それぞれ0.7%、1.4%)を大幅に上回る見通しで、西欧諸国の経済レベルへの接近を続けている(添付資料表参照)。
中・東欧のEU加盟11カ国の経済状況は二極化している。ポーランドの成長率予測が最も高く(2025年、2026年ともに3.5%)、クロアチア(2.9%、2.8%)、リトアニア(2.8%、2.6%)、ブルガリア(2.3%、2.5%)も好調。一方、ハンガリー、ルーマニア、スロバキアは緊縮財政が成長を抑えている。
ドイツ経済の不振は、引き続きスロバキアをはじめ、チェコ、ポーランド、ルーマニア、ハンガリーの産業に悪影響を与えている。経済成長を下支えする要因は個人消費で、良好な労働市場と賃金の大幅な上昇のため、可処分所得の増加分は消費に回る傾向がある。
西バルカン6カ国のGDP成長率は、2025年に3.0%、2026年に3.6%になる見通し。国内需要、送金、インフラプロジェクトは成長の重要な原動力だが、リスク要因として、政治的不確実性、脆弱(ぜいじゃく)なガバナンス、外的ショックが挙げられている。この中で、アルバニアは依然としてトップパフォーマーであり、2025~2027年の成長率は約4%と見込まれており、堅調な対内直接投資の流入、強力な観光業、安定した公共財政によって牽引されている。
なお、ウクライナの2025年の経済成長率予測は、前回より0.5ポイント引き下げられ、2.5%になる見通しだ。戦争と農作物の不作が成長を抑え、軍需産業の好景気と堅調な個人消費だけではロシアの侵攻による被害を補うことはできないとされる。同国のインフレ率はさらに上昇し、4月から5月の間に16%に達した。WIIWのウクライナ担当のオルガ・ピンデュク氏は「ウクライナの経済発展は最終的には欧米の財政的、軍事的な支援に左右される。米国が支援から手を引いて、西欧がそれを補完できない場合、非常に深刻な影響を招くだろう」と指摘する。
一方、ロシアの経済成長率も、2024年の4.3%から2025年は2.0%に半減する見通し。主な原因は中央銀行の金融政策とみられる。インフレ対策のために金利が大幅に引き上げられ(現在20%)、企業の融資が困難になり、倒産に拍車をかける恐れもある。
全体的には、主な下方リスク(イラン、米関税政策、ウクライナ)のうち、イスラエルとイランの衝突の拡大が最大の懸念事項とみられている。今回の夏季経済予測の主担当者であるWIIWのリチャード・グリーベソン副所長は、基本的に中・東欧諸国は外的ショック(新型コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻など)に対し強い回復力を発揮しているが、今回の予測の前提条件はイラン問題がエスカレートして、原油価格が急騰するような地域戦争に拡大しないことだ、と発表の中で指摘した。
(エッカート・デアシュミット)
(中・東欧、西バルカン、欧州、ウクライナ、ロシア、米国)
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