中・東欧諸国の経済、トランプ政権の関税の影響は限定的
(中・東欧、西バルカン、ウクライナ、ロシア、米国)
ウィーン発
2025年05月08日
ウィーン比較経済研究所(WIIW)は4月29日、中・東欧と西バルカン諸国の春季経済予測を発表した。EU加盟国を含めた対象国のほとんどはユーロ圏と異なり、米国のドナルド・トランプ大統領が起こした貿易の混乱にもかかわらず、2025年は経済が堅調に成長する見通しだとした。同予測の主著者であるWIIWのリチャード・グリーベソン副所長は、「同地域と米国との直接的な貿易の流れは少なく、ドイツ経済との緊密な関係による影響も管理できる範囲にとどまるだろう。前回、外的ショックを受けた時と同様に、ポーランドをはじめ国内市場の大きな国は、悪影響により良く対応できる」と述べた。
中・東欧のEU加盟11カ国の2025年のGDP成長率予測は、2025年2月に発表された冬季経済予測より0.3ポイント減の2.5%、2026年の成長率予測は0.1ポイント上方修正の2.8%となった(添付資料表参照)。「来年(2026年)、トランプ政権の関税措置による悪影響は、ドイツの5,000億ユーロの特別基金(2025年3月24日記事参照)によっておおむね補正される」とグリーベソン氏はコメントした。しかし、ドイツ産業への依存度の高い国(チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア)にとっては、米国の関税でさらに悪化するであろうドイツ産業の不振は深刻な問題だ。これらの国では、顕著な実質賃金の上昇による個人消費の拡大が成長の主原動力となる。中・東欧のEU加盟国のうち、ポーランド(3.5%)、クロアチアとリトアニア(ともに2.8%)の成長率が特に高い。西バルカン6カ国(注)の成長率は、2025年に平均3.0%、2026年に3.6%となっている。
なお、ウクライナの展望は不透明だ。2025年のGDP成長率は3.0%と予測される。十分な軍事的および財政的な支援があることを前提に、2026年には4.0%に上がるが、トランプ政権によりウクライナ支援は危ぶまれている。一方、ロシア経済の展望は米国との接近により、明るくなっている(成長率予測は2025年に2.0%、2026年に2.5%)。
(注)セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、コソボ、北マケドニア、アルバニア。
(エッカート・デアシュミット)
(中・東欧、西バルカン、ウクライナ、ロシア、米国)
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